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さくらいろ

4 総二郎のボヤキ

2019/09/18
想い出さがし<完> 8
類は、いつも通り昼前に大学へ向かった

講義が始まると学園の門は防犯上閉められる
だがF4の車は、何時いかなる時も出入り自由だ
その為、今日も警備員は素直に門を開け、類の車を入れてしまった

先に異変に気付いたのは運転手だ
中に入った物の、シーンと静まり返り人の気配が無い
駐車場まで来ても、車が一台も無い

「類様? 今日は休校じゃないでしょうか?」

その言葉に、後部席でウトウトしていた類は目を開け周囲を見渡す
確かに誰もいない

類は直ぐに携帯を取り出し、あきらに電話をかけた

「あきら? 今日、大学休み?」
『ぷっ! もしかしてお前、今大学か?』

「そうだけど?」
『明日、大学受験があるから、今日と明日は休校なんだよ! 昨日お前に念押ししただろ?』

そう言われても全く記憶にない

「ごめん。 聞いてなかった」
『だろうな。 でも起きてんなら丁度良かったぜ。 今から司ん家に来いよ。 総二郎も今、向かってんだ。」

「分かった」

折角起きたし、このまま家に帰るのも、、という思いだった
電話を切ると、、

「司ん家に向かって」
と運転手に告げる

「畏まりました」

運転手は、ゆっくり駐車場を後にし門へと向かう
するとその門の中央に一人の女の子が立っているのが分かった

「あれ? あの子は何なんでしょう?」

その呟きに、類も正面を見る
そこには両手を合わせ必死に願い事をしている女の子の姿があった

「くすっ」

類の口から思わず笑い声が洩れる
神社に神頼みと言うのはよくある事だが、大学に向かって神頼みをする人を見た事が無い
だが英徳の外部受験はかなり狭き門とも聞く
何にでも拝みたくなる気持ちも分からなくもない

「受験生でしょうか?」
「だろうな」
と話していると、その女の子がパッと顔をあげ、恥ずかしそうにペコペコしながらスーツケース片手に隅へ移動した
そしてゆっくり門が開けられ、車が進み始める

類は後部座席からその女の子の姿をジッと見る
背筋がシャンと伸び姿勢が良く、真っ黒のストレートの髪

えっ?
あれって静岡で見た女の子なんじゃ?
と思っている間に、車はス~と門を通り抜け大通りへ出て速度を上げた


司の家に到着した類は、真っ直ぐ東の角部屋へ向かう

「よぉ類! ご苦労さん!」
「お前、大学へ行ったんだって?」

あきらと司は、小ばかにしたように告げる

「ん。 そうだよ」

類はブスッとしたまま空いているソファーに横になると、クッションを抱きしめ目を閉じた

「あれ程、昨日教えてやったのにさ」
と、あきらは笑いながら告げる
その言葉に同調するように、司と総二郎も笑い声をあげる

「聞こえなかったんだから仕方ないだろ!」
と、類は何時になく声を荒げる

「聞こえなかったんじゃなく、ぐっすり寝ていた! それとも寝ぼけていた! の、どちらかだろ?」
と、司は尤もな事を言う
それには類も何も言えない

「そうとも言う、、」

ゲラゲラ笑い声をあげる三人を横目に、類は再び目を閉じる

「じゃ、これからどっかでランチして遊びに行こうぜ?」
「よしっ! 行くか!」
と、話は直ぐにまとまる

「今夜はオールな! 帰りたくねぇんだよ」
「オール? どうかしたのか?」

すると総二郎は、深い溜息を吐く

「大有り! 高三の女の子が英徳大受験の為に、俺ん家に来るんだよ!」

その言葉に、類の身体がピクリと動く
やはりさっきの女の子は、、
と、自分が想像していた女の子であると確信する

「親戚か?」
「親戚に高三の女はいねぇよ」

「と言う事は、アレ以外考えられねぇよなぁ」
「だよな」

司とあきらは言葉に出さない物の、許嫁のような物では?と推理する
その三人の会話を耳にしながら、類も内心考える

あきらと司は、総二郎の嫁候補を指しているのだろう
でもあの時、家元は一蹴した
『彼女に失礼です。 総二郎には勿体ない。』
と言っていたが、あの言葉は謙遜した物だったのだろうか?

「受験って事は、合格したらお前の家で暮らすのか?」
「あぁ。」

「決まりだな!」

司の言葉に、総二郎は深い溜息を吐く

「こういう仕事だから政略結婚になるとは思っていたけど、まだ大学生だぜ?
せめて卒業するまで待ってくれよな!」
とボヤク

「まあまあ。 案外可愛い子かもよ?」
「少なくとも年下だし、贅沢は言えねぇんじゃね?」
と二人は他人事だ

「まあ、今夜はとことん付き合ってやっから! ほらっ、類! 行くぞ!!」

類は耳をダンボのようにして聞いていたが、今起きたばかりのようなふりをする

「ん? どこ?」
「先に飯食って、、今夜はメープルだな!」
「飲んで嫌な事は忘れようぜ! 俺らも付き合ってやっから」

「あぁ。 考えても仕方ねぇし、、、類! 行くぞ!」

類は渋々と言った表情で起き上がると、大きな欠伸を一つする

「ゆっくり寝られるところ希望ね」
「分かったから。 メープルで好きなだけ寝ろよ!」

こうして四人は道明寺邸を後にした




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Comments 8

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2019/09/18 (Wed) 09:21

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2019/09/18 (Wed) 09:21

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2019/09/18 (Wed) 09:53
りおりお

りおりお

Re: り~様

総ちゃん、司、あきらくんは、つくしちゃんの事を総ちゃんの嫁候補だと思っていますね
類君は、いろいろ考え中
嫁候補ではないにしても、西門家に居候させる程気に入られているのはなぜ?
といったところでしょうね

さて、、つくしちゃんの正体は?
そしてF4とどうやって絡むのか?
お楽しみに

2019/09/18 (Wed) 10:31
りおりお

りおりお

Re: ビオ~様

もう会う事も無いと思っていた女の子と、再び再会
と言っても、類君だけが気づいたんですけどね

そして総ちゃんの話から、西門家に居候するのでは?と思っています
でもなぜそこまでの好待遇を?
と疑問ですよね

家元は全力で嫁候補を否定していましたしね
一体つくしちゃんは何者なんでしょうね

2019/09/18 (Wed) 10:33
りおりお

りおりお

Re: ゆきり~様

今のところ、類君だけがつくしちゃんに会っています
そして、総ちゃんの嫁候補ではないと思っている
その点、他の三人は嫁候補だと疑わない

総ちゃんは、頑なになっていますよね
だって、つくしちゃんが来るからと家には帰らないみたいですから
やはり自分の人生を決められるのが嫌なんでしょうね

さてどうなるのやら

2019/09/18 (Wed) 10:35

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2019/09/18 (Wed) 10:44
りおりお

りおりお

Re: シマエナ~様

そうなんです
あの車には類君が乗っていました

そして、つくしちゃんの姿に気づきました
普通、類君は女性に無関心ですもんね
でもつくしちゃんの事は気になる様子
まあ今は、西門家とどういう関係が?という部分で気になるんでしょうけどね

さて、、なんとなくF4と絡みがありそうな予感がひしひしと、、
どうなるんでしょうね

2019/09/18 (Wed) 17:34
りおりお
Admin: りおりお
こちらは二次小説『類つく』のお部屋となっております
そういった類の物が嫌いな方は、回れ右をしてご退場ください
ヤフーブログ『類❤だ~い好き』から引っ越して参りました
引き続き類君とつくしちゃんの幸せな姿をお届けできればと思っております
尚、ブロ友は現在受け付けておりません
想い出さがし<完>