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さくらいろ

30 ナイス!

2020/01/12
兄妹ラプソディー<完> 8


18時につくしが帰宅すると、類に出迎えられる

「お帰り。」
「たっ、、ただいま。」

こうして兄に出迎えられるのは初めてだ
何かあったんだろうか?と思うが、思いつく理由は一つしか見当たらない

「今日さ。 銀座に行ってきたんだけど、そこで美味しそうなケーキを見つけて買ってきたんだ。 後で食べような。」

これは椿のアドバイス
妹の好きなものを買い、それで話を膨らませ、自然の流れで妹の名前を呼ぶ!
その時思い出したのが、この前父親が買ってきたケーキだ

食レポしながら美味しそうに食べていた
これなら話も弾むし、名前を呼ぶチャンスも増える

一方のつくしは、兄のニコニコとした笑顔に、素直に喜べない
あんな綺麗な彼女がいたことも知らなかったし、久しぶりのデートで浮かれているようにしか見えないからだ

つくしは心に言い聞かせる

あたしは妹!
妹は兄の恋を応援する!
だって、もし進に彼女が出来たら嬉しいし、応援したいから!!

「ありがとう。 お兄ちゃん。」
「どういたしまして、、」

類はその後に『つくし』と入れたかったのだが、そこで声が止まってしまう
その間に、つくしは靴を脱ぎ上がり込んでしまった

タイミングを失った類は、自分に言い聞かせる

まだチャンスはある!
一度名前で呼べば、後からはスムーズに言えるはずだ!と、、



夕食は、母親が下ごしらえをしてくれていた
今夜は豆乳鍋で、テーブルの中央にカセットコンロを置き、鍋に火をつけた

もちろんこういう料理も初めての類は、テーブルに着席し、成り行きを見守っている
その行動が、つくしの心を揺さぶる

いつもなら夕食が出来るまで部屋で寛いでいるのに、どうして今日に限って?
と思うと、脳裏に椿の顔が思い浮かぶ
しかも今日に限って鍋料理
豆乳が温まったら材料を入れ、火が通るまで他にすることがない

つくしはやる事がなく、類の隣に腰を下ろした

「あのさ。 これ豆乳だろ?」
「そう。」

「という事は、温めていくと豆腐になる?」
「ならない。 にがりが入ってないから。」

こうして兄から質問されることはよくあることで、つくしは助かったという思いで説明を始める

すると母親から、、
「つくしちゃん、今日はどこへ行ってきたの?」
と、間の悪い質問をされた

途端、ドキッとしてしまう
今更、『銀座』とは言いにくい
なぜなら先ほど兄が『銀座へ行ってきた』といった時、スルーしてしまったからだ

かといって嘘は苦手だ
その為とっさに出た言葉は、、

「内緒!」
だった

これなら嘘を付いた事にはならないし、何も答えなくて済む
我ながら良い答えだと思った

一方、その隣の類は平穏でいられない
あからさまな動揺を感じたし、『内緒』という言葉ですべてを隠蔽された感じだ

この家にきて、何でも話してくれていたのに、急に隠し事をするという事は、、
もしかしてデート?と、勘ぐってしまう

その為、相手は誰だ?
との気持ちが声となって出てしまう

「誰と行った?」

言った後、すぐさまやばい!と思ったが、後の祭りだ
しかし話の流れ上、おかしな言葉でもないし、内緒という意味深な言葉を言うから詮索したくなるんだよ!
と自分を肯定する

それに兄として妹を心配する意味にも取れるだろ?
と、さらに必死に正当化する

一方のつくしは、なんであたしが尋問されなきゃならないの?
せっかく『内緒』という言葉で、銀座へ行ったことを回避できたと思ったのに、、
との思いだ

その為、冷ややかな声となって答える

「友達!」

友達と聞き、類はホッと胸を撫でおろす
だがこの場合、友達と言えども男性だったら?との不安は拭えない
相手は男か女か、、どうやって聞き出せば、、

そんな類に、今度はつくしが問う

「お兄ちゃんは、誰と銀座へ行ったの?」

類は考える

椿姉ちゃんは司の姉ちゃんだし、司は依頼主だろ?
依頼主は俺の父親と思っているし、俺は一人っ子で姉はいないし、、
何と答えればいいんだ?

答えに困った類は、つくしの言葉を引用する

「内緒!」

その言葉に、つくしはイラッとする

はあ?
内緒?
なんで素直に、彼女って言わないのよ!
見たんだからね!
この目でしっかりと!!

そりゃ、あたしは偽物の妹だけど、隠し事することないじゃない?
偽物でも兄の恋をバリバリ応援するのに!!
って、ちょっぴりショックだけどね、、
いや、かなりショックなんだよ、、
今もね!!

その気持ちをグッと押さえ、妹に徹する

「楽しかった?」
「ん。 まあまあかな? あんたは?」

「あたしもまあまあ? 久しぶりだったし。」
「そうだな。 ずっとこの家と学校の往復だったしな。」

と二人は腹の探り合いをする
そして会話はクリスマスへと移る

「街はクリスマス一色だったね。」
「あぁ。 ツリーとかもあったな。」

ここで二人の会話は途切れる

類は、久しぶりに友達と出かけ楽しそうな妹に、『ここで一緒にクリスマスを過ごそう』と言っても良いのか?と悩み
つくしは、『恋人がいるのに家族とクリスマスを過ごそう』と言っても良いのか?と悩む

その二人の微妙な空気に母親が助け船を出す

「ねえ。 クリスマスなんだけど、ここで家族で祝わない?
ホールのケーキを買って、、小さなツリーも飾って、、」

その母親の言葉に、二人は即答する

「楽しそうだな。」
「うん。 そうしよう!!」

その二人の心は一致していた
ナイス!! 母さん(お母さん)



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Comments 8

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2020/01/12 (Sun) 09:20

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2020/01/12 (Sun) 09:31

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2020/01/12 (Sun) 11:36
りおりお

りおりお

Re: ゆきり〜様

二人共気になってます
でも…上手く答えられないから『内緒』という言葉を使って誤魔化したんですが、その言葉が余計に気になります(笑)
無限ループですね

そんな時、母親の一言で!
ナイスです
二人共、一緒にクリスマスを送りたかったのですから(笑)

2020/01/12 (Sun) 17:05
りおりお

りおりお

Re: ビオ〜様

二人共、腹の探り合いです

つくしちゃんは現場を見ているから、類くんが何を言っても何をしても結びつけてしまいます

そして類君も内緒という言葉にイライラ(笑)
好きと認識したから、今度は嫉妬という感情も現れますよね(笑)

母親の言葉に助けられた二人
一緒に過ごすクリスマスはどうなるかな?

2020/01/12 (Sun) 17:07
りおりお

りおりお

Re: り〜様

つくしちゃんは誤解していますからね
クリスマスを類くんと一緒に過ごしたいけど、クリスマスは彼女と過ごすだろうし…と、思っていた所に、母親の提案が!

飛び上がって喜んでいるでしょうね

もちろん類君もね!
つくしちゃんの名前を呼んで、カレカノになりたい!
クリスマスも一緒に過ごしたい!
と言う気持ちですから

2020/01/12 (Sun) 17:10

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2020/01/12 (Sun) 22:37
りおりお

りおりお

Re: シマエナ〜様

二人は腹の探り合い?
互いに、出かけた相手を詮索中

内緒という言葉は、秘密にされている感じがして、モヤモヤしますよねぇ
私もよく問い詰めます(笑)
しょ〜もない事を、あやふやな言葉で言わないでよ〜
気になるじゃない!
と、逆ギレする事もしばしばです(笑)

2020/01/13 (Mon) 07:14
りおりお
Admin: りおりお
こちらは二次小説『類つく』のお部屋となっております
そういった類の物が嫌いな方は、回れ右をしてご退場ください
ヤフーブログ『類❤だ~い好き』から引っ越して参りました
引き続き類君とつくしちゃんの幸せな姿をお届けできればと思っております
尚、ブロ友は現在受け付けておりません
兄妹ラプソディー<完>