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第四章<完>

4-45 高ぶる気持ち

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12月24日
裁判後の翌日、類はフランスからスイスへ向かった

昨日司に電話をした所、今からスイスの別荘へ向かうから、そこで落ち合おうと言われ、直ぐに電話が切られた
これだけ助けられた司には、きちんと会って礼を言う必要もある、、と考えていたし、スイスからドイツは近い
礼を述べた後、すぐに牧野の住んでいる場所を聞き出せば、今日中に会えるかもしれない、、と期待に胸を膨らませていた

類は、つくしと愛樹に会ったのがドイツだった事から、二人はドイツに住んでいると思っていた


スイスのローザンヌへ向かいながら、はるか遠くの山を見る
そこには、アルプス山脈が見える

そう言えば、、
日本に居る時に、牧野とハイジ村へ行ったっけ
そこで食べたチーズフォンデュに舌鼓を打ち、ヤギミルクアイスを堪能していたっけ

そのアイスのカップは、今頃どうなっているだろう?
今も、飾られていると良いな、、

今は、雪が積もっているけど、温かくなったら牧野と愛樹を連れて、ハイジに会いに行こうか?
確か、ハイジの家とかあるんじゃなかったっけ?
と、思いながら列車に揺られていた

ローザンヌ駅から指定された場所までは、タクシーを使った
少し小高い丘の上に、その別荘はあった
周りをぐるりと高い塀で囲まれ、監視カメラも適所に配置されている

さすが司の別荘だけの事はある、、と思いながら、入り口の門へと近づいた
そしてインターホンを押した




愛『司、、まだかな?』
つ『そろそろかな?  でも忙しいし、クリスマスプレゼントを渡したら、直ぐに帰るかもよ?』

つくしは、夕食の準備をしている
司は、何時もほんの数時間しか滞在しない
今日は、クリスマスプレゼントを持って来る、、と言っていたから、少しでもクリスマス気分を味わって貰えばと、レアとチキン料理を用意している
もちろんケーキも用意した
その様子を、対面キッチンの前から見ている愛樹

愛『でも、自転車に乗れるところを見せたいんだ。 それくらいの時間はあるでしょ?』
つ『それくらいならね、、でも雪が降ってきたらダメだよ? 芝生が濡れると、滑りやすいからね。
  それと暗くなってもダメ、危ないからね』

愛『うん、、早く来ないかなぁ』
と、司の到着を今か今かと待ちわびていた

すると、、
来客を告げるインターホンが鳴る
その音に、つくしと愛樹は、思わず顔を見合わせる

愛『司だ!』
つ『噂をすれば、、だね』

マキシムは、その音に画面で来客の姿を確認し、門を開ける為、外に出ようとする

愛『マキシム! 待って! 僕も一緒に行く!』
マ『良いですけど、、外は寒いので、上着を着てからですよ』

そう言いながら、玄関に掛けてあるジャンバーを羽織らせ、一緒に向かった

大きな門の横の小さな門のドアロックを外し、マキシムが開ける、、
と同時に、愛樹がピョコンと体を出した

愛『司! いらっ、、』

愛樹の言葉は途中で止まる
そして、一歩下がり、マキシムのジャンバーを握り締めた

一方の類も、突然愛樹が現れたことに驚き、直ぐに声が出ない
その二人とは対照的に、マキシムは冷静だ

マ『いらっしゃいませ。 お待ちしておりました。 花沢様、、どうぞ中へお入りください』

その言葉に、類はやっと我に返った

類『すみません。 有難うございます』
と言い、その小さな扉から中へ入った

そして、すぐさま愛樹の目線に屈みこむ

類『こんにちは』
愛『、、、こんにちは』

類は、どう言っていいのか分らない
でも考えていても仕方ない
こうして目の前に、愛しの息子がいるのだから、、
覚悟を決め、素直に今の気持ちを告げる

類『愛樹、、長い間、待たせてゴメン。 寂しい思いをさせてゴメン。
  もう二度と離れないから、、パパと呼んでくれるかな?』

その言葉に、愛樹はマキシムの方を仰ぎ見る
するとマキシムは、優しい眼差しで愛樹に微笑み、しっかりと頷いた
それを確認した後、ゆっくり類の方を見る
そこには、少し不安そうな類の顔、、

愛『パ、、パ?』

疑問形だが、その言葉に類の表情は優しい笑みに変わる

愛『パパ?』

愛樹は、先程よりもしっかりした口調で、確かめるように呟く

類『ん、、愛樹のパパだよ』

その顔は、満面の笑みに変わっている

愛『パパ~』

愛樹は、その類の胸に向かって飛び込む
そしてすぐに首の後ろに手を回し、もう離さないとばかりにギュッと力を入れた
類もその愛樹を、しっかりと抱きしめる

前回は、こうして抱きしめる事も叶わなかった
それどころか、この子の成長を、何一つ見る事が出来なかった
その申し訳なさ、寂しさ、愛しさ、色々な感情が込み上げてくる

暫く二人が抱き合っていると、マキシムが遠慮がちに声をかける

マ『ここは寒いですから、、どうぞ中へお入りください
  中には、つくしもいますから』

そう言われ、二人はゆっくり手の力を緩める
だが、やはり離れたくないと言う感情が働き、類はそのまま愛樹を抱き上げた

類『ママンの所まで案内して?』
愛『うん』

類は、別荘へ向かいながらも、愛樹の重さを確かめるように歩く
DVDを通して、愛樹の色々な表情は見て来た
だが重さまでは、全く伝わらない

愛樹は、こんなに重いんだ
生まれた時は、もっと軽かったんだろうな
そして、かなり小さかったんだろう

立ち合いたかった
一緒に感動したかった

離れていた時間は取り戻せないけど、、
やっと手に入れたこの幸せを大切にしよう

今日この時から、愛樹の成長を見守り、愛していこう、、
と心の中で誓う

愛『パパ、、ここが入り口だよ』
その言葉に、ゆっくり愛樹を下ろす

すると愛樹はドアを開け、勢い良く中に入っていく
その後ろを、類はゆっくりとついて行く

愛『ママン、、ママン、、パパが来たよ』
つ「えっ!!」

愛樹が向かった先には、キッチンで何かをしている愛しい人の姿
その愛しい人が驚きの声と共に、顔を上げる
その瞳が、こぼれ落ちそうなくらい見開いたと思ったら、かすれた声が俺の耳に届いた

つ「る、、、い、、」
その声を聞くのも6年ぶりだ

まずは謝りたかった
この5年半の許しを請いたかった

だが、、、
その思いとは裏腹に、足が勝手に動き始める
そしてキッチンの中に回り込み、しっかりと抱きしめた

自然に俺の手は、牧野の背中をクロスに回す
昔っから、牧野を抱きしめる時にはこうして腕を回していた

身体は、6年経った今でも、はっきり覚えているんだな、、と思いつつも、気持ちが高ぶり直ぐに声が出ない

類「ま、、きの、、」

何とか紡いだ声も、情けないくらいに震えている

でも、、その呟きに答えるように、俺の背中に回された牧野の腕に、力が入ったのが分かった








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