fleurs printanières 第7話 -きざみ隊-
第7話
誰が書いたものなのか?
ご想像しながらお楽しみ下さい。
…やっと帰って来れた……
優紀のバイトに始まり、桜子でしょ?滋さんでしょ?
捕まった感半端ないのは、何故だろ?……いや……バイトだけど、
まぁ、滋さんのは心地よいバイトで楽チンだったけど?……世界の果てでするバイトじゃないわよね?
………移動距離を考えてただけで、疲労感が半端無い…わ……
花沢 類とも、ここ暫くマトモに話しすらしてないな……。
あと少しなんだけどな……
「失礼、牧野つくしさんですよね?お迎えにあがりました。」
急に声をかけられて振り向いたら…この人どっかで見たことあるような…えーと、何処でだっけ。
ダメだ…疲れすぎてて頭が働かない。
「はぁ?あの…どちら様でしたっけ?あたし、会ったことあります?」
「とにかくこちらに。もうフライト準備完了ですのでお急ぎ下さい。プライベート用ですので少し離れていますから走りましょうっ!」
「ええっ!ちょ、ちょっと待ってっ!…あた、あたし、会いたい人がっ…!」
「こちらにも牧野様に会いたい方がおられるのですよ。さぁっ!」
何なの、この人っ!って言ってる間に引き摺られるようにして違う出国ゲートに入ってった!
せっかく着いたのに、また何処かに連れて行かれるのっ?!
「あのっ!せめて名前ぐらい名乗ってくれないかなぁ!」
「あぁ、申し遅れました。私は道明寺司様にお仕えしてます、三沢と申します。お久しぶりですね、牧野様」
「……」
あぁーーっ!思い出した!道明寺の側にいた三沢さんっ!
何で、どうして?!今度は…まさか道明寺なの?!
なんで?
なんで、あいつのボディーガードが?
何か、嫌な予感がする…
いや…嫌な予感しかしない!
すると、あたしの携帯が鳴り始めた
相手は…『道明寺』
「はい」
『おっ、牧野か?』
「そうだけど?」
『お前、バイト探してんだってな?』
やっぱりね…
西門さんから始まって、美作さん、優紀、桜子、滋さんときたら、道明寺にも話が行ってるよね?
ってか、あの茶道バカ!
なんで皆に話してるのよ!
そりゃ、類の誕プレの為にお金は欲しかったけど、何も元カレにまで話す必要なんてないじゃない?
「そうだけど…もうお金は貯まったから…」
そう…
既に、おかしいぐらいのバイト代を貰い、予定の金額に達したから、もうバイトをする必要はない
『なんだと!俺様のバイトを断るって言うのか?』
だって…
元カレだよ?
しかも、さっき三沢さんがプライベートジェットが…って言ってなかった?
って事は…
チラリと三沢さんを見ると、なぜかあたしに向かって拝んでいる
『俺様だってだな、忙しいんだよ!だけど、お前が類の為にバイトを探しているって言うから、なんとかそのバイトを見つけたって言うのによぉ』
そう言われると、断りにくいじゃない…
それに、バイトの目的を知っていながら、わざわざ探してくれたなんて、嬉しいじゃない?
それに忙しいから、三沢さんを寄越したんだろうし…
ここまで来たら、行くしかないか!
「分かった!やらせてもらう!」
その言葉に、目の前の三沢さんは、あからさまにホッとした表情を見せ、あたしに向かって何度もお辞儀をした
あいつ…どんな言い方をしたんだろう?
確実に脅していたんじゃない?
こうしてあたしは、羽田からそのまま楓マークのプライベートジェットで、あいつの待つNYへ向かった
ケネディ国際空港近くの道明寺の専用エアポートに着いたのは現地時間で28日の18時ちょうど。
つまり日本時間で29日の8時…もう時差で頭がグラグラなんだけど!
機内食ですらこのあたしが食べられないなんて重症だわ……。
「だ、大丈夫ですか?牧野様…お疲れのところ司様の我儘を聞いていただきホントにありがとうございます!さっそくですが司様がすでにロビーでお待ちですので!」
「えっ!そ、そうなんですか?」
「はいっ!あちらにっ!」
三沢さんがスッと手を伸ばした先を見たら、懐かしい道明寺の姿が…。
うわっ…ちょっとドキドキする。まだシルエットだけなんだけど、あの歩き方、あの髪型…ホントに道明寺だぁ…。
あら?でも何でタキシードなんて着てるの?いや、凄い素敵なんだけど、ここに迎えに来るのに何でそんな格好してんの?
そう言えばなんのバイトするのか聞いてなかったような…。
「よぉ、牧野、久しぶりだな。相変わらずガリガリだな、お前!そんなんじゃ今から着替えるのに苦労するな…」
「う、うん、久しぶりだね・・・って着替えるって何よ?道明寺は私に何させる気なの?」
「ふんっ…多分、今までで1番スゲぇバイトじゃないか?この俺様のパートナーなんだからよ!」
今…なんて言った?
あいつのパートナーって言わなかった?
「無理無理無理…なんで、あたしがあんたのパートナーを?
そんなのできる訳ないでしょ?」
「大丈夫だ!俺様がついているだろ!!」
その自信はどこからくる?
あたしは、パートナーと言う物をやった事が無いんだよ?
それに、道明寺ジュニアのパートナーとなれば、世界中の注目の的じゃない!
現に、見たくもない記事を目にして嫌な思いを経験して、その度に類に慰められ‥って、何を思い出させるのよ!!
それに、あたしは元カノであって、誤解を生むような行動はしたくないし!!
「あのよぉ! グダグダ考えるのはお前の悪い癖だけどよぉ、時間がねぇんだわ。 さっさと着替えてくれねぇか?」
「でも」
「これはバイトだ! まあこれが最初で最後になるだろうしよ」
「道明寺…」
最初で最後…その言葉が胸に突き刺さる
道明寺と付き合っていた時、何もしてあげられなかった負い目もある
それに、道明寺の切ない表情が、あたしの心を打つ
―これはバイト
―最初で最後のパートナー
「分かった。 でも、ほんとに迷惑をかけるかもしれないんだからね」
「大丈夫だ。 お前は俺の隣で、笑っていれば良い」
あたしに向かって、笑顔を見せる道明寺
その表情に、どれだけ心が熱くなった事か
でも今は、その熱い心よりも安らぎを求めるようになったあたしがいる
ごめんね‥道明寺
そして‥ありがとう
言葉では言えないけれど、あんたには感謝しかない
だから‥パートナー頑張るね
つくしは別室へ連れて行かれ、すぐさまスタッフの手でヘアメイクと着替えを済ませる
真っ赤なドレスは、あたしにピッタリで、低めのヒールもあたしを気遣っての物と分かる
ほんと、、こいつのさり気無い優しさ、涙が出そうになる
「出来たか?」
「うん」
準備が出来たあたしを見た道明寺は、数秒固まった
そしてフッと笑みを漏らし、腕を差し出した
その腕に、あたしの腕を絡ませる
「行くぞ」
「うん。 よろしくね」
さぁ、、気持ちを切り替えよう
バイト‥
これはバイトなんだから
連れて来られたパーティー会場
かなりの人‥
それに、かなりのマスコミ?
「ねぇ、、これ、かなりのマスコミの数なんだけど?」
「そうだろうな。 各国大使館のパーティーなんだからよ」
「えっ?」
「お前、緊張するなよ。 笑ってろよ」
つくしは緊張から、顔が引きつる
その表情が、司の笑いを誘う
その司の珍しい表情に、マスコミがフラッシュを焚き、カメラを向けた
そのカメラに向かい、つくしは満面の笑みを見せた
***
無事、パートナーのバイトを慣れない笑顔を張り付けたまま、終了。
急げと言われるまま、引き摺られる様に高級時計店に走り込んだ。
「ねぇ、道明寺……知ってたの?」
「ん?…あぁ、俺らの連絡網甘くみんなよ」
「……そうだった……ね」
「ありがとう」
「………あぁ…」
「このまま空港に送るから帰れ」
「…うん、それも…」
「ありがとう」
車の中、二人の間に流れる空気は、
あの頃の空気とは違うけれど二人だけのもの。
到着いたしました。の声に顔をあげれば、
差し出された手は、以前掴もうとして掴めなかった大きな手だった。
………ありがとう……
「道明寺、ありがとね」
「…牧野、頑張れよ」
「………うん、あんたもね」
「じゃあね」
「おぉ、じゃあな」
司は、大きく手を振り搭乗ゲートに消える真っ直ぐな背中を見送る。
一つ息を吐き、きっとヤキモキしているであろう親友のNo.を呼びだした。
『………俺だ』
『間もなく牧野を乗せた飛行機が離陸する』
『ちゃんと捕まえろよ』
『泣かせたら、承知しねぇからなっ』
Rendez-vous demain...
↓おまけつきです♪
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