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さくらいろ

7 心中

2018/08/19
Ti amo<完> 14
カ『ユーリ。 今日はもう引き上げるぞ』
ユ『分かった。 今日は全然だったね』

二人は、海から網を引き揚げる物の、やはり魚は捕れていない
その時、ユーリの瞳は、海の遥か向こうに何かが浮いているのを捉える

ユ『父さん。 あれなんだろう?』

ユーリの指差す方向を見ると、確かに何かがプカプカと浮いている

カ『船か? どこかの港から流されたのか?』
ユ『それにしては、かなり浸水して無い? ちょっと行ってみようよ?』

ユーリの言葉に、父親のカルロは舵を小船に向け切った
そして近付くにつれ、ユーリが興奮したような声で叫ぶ

ユ『大変だ! 人が乗ってる!』
カ『人が?』

カルロは人が乗っていると言う声に、エンジンを緩めゆっくりと近づく
少しの波でも小船が大きく揺れ、今にも転覆しそうだ

慎重に漁船を小船に近づけると、男女が横たわっているのが見える
身体の半分は既に海水に浸かり、互いの身体が離れないようしっかりと縄で括り、手も繋がれている

ユ『死んでる?』

カルロは、ゆっくりと漁船を横付け、小船の先端にロープを巻きつける
そしてつくしの首元に手をやり脈を確認する

カ『いや、生きてる。 この状態を見ると、心中だろうな。 まだ若い様だし何かあったんだろう』
ユ『どうする?』

カ『とりあえず連れて帰ろう? 何かあったか判らないが、命を粗末にするものじゃねぇ』
ユ『だよね』

二人は小船の海水を軽く搔き出し、ゆっくりと自宅のある港まで引っ張っていった

ユ『母さんを呼んでくる』

港に着くとすぐに、ユーリは船を降りダッシュで自宅へ向かった
カルロは、漁船から降りると、浅瀬まで小船を引っ張っていき、砂浜にしっかりと固定すると、類の身体を揺すった

カ『おい! 大丈夫か? おい!』

その声と、身体のゆさぶりで類の意識が覚醒し、ゆっくりと目を開けた

カ『おっ! 気がついたか? ちょっと待ってろ! 今、そのロープを切る物を持って来る』

カルロは、類が目を開けたことにホッとし、女性の方はこの男性が起こすだろうとその場を離れ漁船へ戻った
類は後頭部がズキズキと痛み、その頭を手で押さえようと腕を上げる
すると、誰かと手を繋いでいる事が判る

ゆっくりと首を横に向けると、黒髪の女性が横たわっており、その女性の手をギュッと握っている
指を解くが、かなりの力で握っていた様で、女性の手の甲にくっきりと赤い指の跡がついている
そして自分の身体と女性の身体は、しっかりと麻のロープで括られているのが分かる

類「どういうこと? こいつは誰? それにここはどこだ?」

体をゆっくり起こすと、ロープが引っ張られ女性の背中が少し持ち上がる
類は迷う事無く、女性の頬を軽く叩く

類「ちょっと、、あんた? ちょっと!」
つ「う、、ん、、」

つくしは、その刺激でゆっくりと目を開ける
そして類の顔を見て、ガバッと起き上がる
と同時に、後頭部に激痛が走り手で押さえた

つ「痛っ、、、」

その行動に、類は自分と同じように、女性も後頭部を打っている事を知る
つくしは、後頭部を押さえながら、目の前の人を見る
かっこいいハーフのような男性だが見覚えが無い
ジッと見つめていると、目の前の男性が口を開いた

類「あんた、、、誰?」
つ「あたし? あたしは、、、」

ここまで呟き、ハタと思う

つ「あたしは、、誰? あなたは? あなたは誰?」
類「俺? 俺は、、、、」

ここまで呟き、類も目を見開く

類「分からない」

二人は互いの姿をまじまじと見る
何度見ても思い出せないが、二人の身体はしっかりとロープで括られ、小舟に乗りどこかの砂浜に居るのが分かる

そんな二人の元に、カルロが小型ナイフを持ってやって来た

カ『オッ良かった。 二人とも、気がついたか? こんな小さな船で海に出るとは自殺行為だぞ?
  まあそのつもりだったんだろうけどな。 何があったか知らないが、海に沈んでも離れないようにと、
  こうして互いの身体をしっかりとロープで括っているぐらい、愛し合っているんだろうからな」

そう言いながら、二人を繋いでいるロープを切った



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Comments 14

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2018/08/19 (Sun) 09:52

りおりお

Re: ゆきり〜様

まさか!の展開かな?

頭を強打している二人…
目が冷めたら記憶が無い…

でも、今は無事助けられたことにも感謝かな?
あのままだと、確実に海の中に沈んでいたでしょうからね

そして、この後の行動は?
明日もお楽しみくださいね〜

2018/08/19 (Sun) 10:19

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2018/08/19 (Sun) 10:50

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2018/08/19 (Sun) 11:18
りおりお

りおりお

Re: キャ~様

二人とも危機一髪でしたね

見つけて貰わなければ、そのまま海の中に沈んでいたでしょう

そして、、赤ペンありがとうございます
「あんだ、、」って(笑)
訛っている類君って類君じゃない(笑)

修正しました

2018/08/19 (Sun) 12:00
りおりお

りおりお

Re: みわ~様

まさかの展開に!!

とにかく今は、無事助かっただけでも良しですよね
小船を見つけてくれなければ、今頃はきっと、、、ですから

でも、二人とも何も覚えていない
この状況、、どうする?

しかもイタリアと言う異国の地です
困った、、困った、、

2018/08/19 (Sun) 12:04

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2018/08/19 (Sun) 12:13

りおりお

Re: まりぽ〜様

助かってよかった〜ですよね
(もちろん、亡くなっていたら話にならないんですけどね(笑))

そして、助けてくれた人も良さそうな人みたいですね

ただ…記憶が…
二人の記憶が無いってことは…
類君が筑紫ちゃんのことを好きって記憶もないわけで…
どうするんだろう?

って事で、明日も楽しんで下さいね

2018/08/19 (Sun) 12:20

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2018/08/19 (Sun) 14:36

りおりお

Re: り〜様

助かった…
それは、良かったぁ…と、安堵ですよね
でも、記憶喪失…
どうなるのかな?

でも、助けてくれた人は良さそうな人だし、その点は救われたかな?

2018/08/19 (Sun) 14:49

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2018/08/19 (Sun) 20:17
りおりお

りおりお

Re: さとぴ~様

あははっ、、
そこに注目ですか!!!

あひるの缶詰らしき画像は、単に可愛かったからです
そして、二人が小舟に乗っていた=アヒルが缶詰に乗っている
イメージにぴったり?と思っただけです(笑)

えっ!
センスが無いって?

はいっ、ごもっともです
って事で、続きもお楽しみに

2018/08/19 (Sun) 22:25

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2018/10/08 (Mon) 22:17
りおりお

りおりお

Re: ほっ~様

初めまして
貴重なご意見ありがとうございます

そんな違いがあったのですね
本当は二人で手を取り生きていきたかったけど、それが諸事情でどうしても出来なくて、望まぬ形で死を選んだ
と言う事も『無理心中』だと思っていました(笑)
知識が無くてスミマセン
『心中』に変更させて頂きました

毎朝9時10分の更新頑張りますので、これからも是非楽しんで下さいね
ありがとうございました<(_ _)>

2018/10/09 (Tue) 09:02
りおりお
Admin: りおりお
こちらは二次小説『類つく』のお部屋となっております
そういった類の物が嫌いな方は、回れ右をしてご退場ください
ヤフーブログ『類❤だ~い好き』から引っ越して参りました
引き続き類君とつくしちゃんの幸せな姿をお届けできればと思っております
尚、ブロ友は現在受け付けておりません
Ti amo<完>