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LET'S AFTER ♫<完>

番外編① (心音編①)

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心音は授業が終わると急いで駐車場へ向かう
その間にも、何人もの男の子に声をかけられる

「あっ、花沢さん。 習い事?」
「はい」

「あっ、花沢さん。 今度僕の家でパーティーを開くんだけど、来てくれないかな?」
「たぶん、無理だと思います」

返事をしながらも、足は駐車場へ向かっている
その為、前に人がいる事に気付かず、派手にぶつかってしまった

「きゃっ」
「おっと、、大丈夫?」

男子生徒はこけそうになった心音を、しっかりと抱きかかえる

「すみません。 急いでいた物で、前をよく見ていなくて」
「いや。 花沢さんに怪我がなくてよかったよ」
と腕を緩め、ニコリと笑みを見せる

その二人の光景は、周囲の者が溜息を洩らすほど絵になっている
というのも、男子生徒の方は道明寺系列の会社社長の御曹司
背も既に170cmを超え甘いマスクで、中等部一のイケメンだ

一方の心音もバックグラウンドも容姿も群を抜いている
長い髪を一つに束ね、凛とした姿勢は編入当初から目立っていた
その上、それをひけちらかす事無く、誰にも優しい
その為、中等部の男子は、競い合うようにして心音を誘っているのだが、未だ良い返事を貰った者はいない

「あのっ。 何で私の名前を? 同学年じゃないですよね?」
「一学年上だけど、花沢心音さんは有名だからね。 勉強熱心で誰にでも優しいってさ」
と、自慢のスマイルを見せながら話す

普通なら、此処で誰もが陥落する
だが、心音は表情を変える事無く男子生徒の腕を解く

「そうなんですか。 でも学校は勉強する所だから当たり前だと思いますけど? とにかくぶつかってすみませんでした」
と再び頭を下げると、駐車場へ向かって駆け出した

残された男子生徒の元へ友人が近づく

「珍しいな。 お前のスマイルに靡かない女がいるなんてさ」
「きっと照れてるんだよ。 でも明日は決めてやるぜ」
と、自信たっぷりに告げた



心音は車に飛び乗った
もちろん向かう先は西門邸だ

放課後は毎日習い事と称し西門で茶道、茶花、着付け、挨拶状の書き方など、数々の事を教えて貰っている

「こんにちは」
「ココちゃんいらっしゃい。 家元が茶室で待ってるわ」
と、雪乃がニコニコしながら告げる

不在の場合が多い中、今日は会えると思うと心音の表情が和らぐ
だがそれも一瞬の事
直ぐに表情を引き締め茶室へ向かった

襖を開けると、ピンッと張りつめた空気に、心音の気持ちも一気に引き締まる

「遅くなり申し訳ありません」
「いや。 いつも留守にし、まともに稽古をつけてやれなくてすまねぇな」
「いいえ。 それでも週に一度は兄弟と共に稽古をつけてくれるので、それで充分です。」

毎週、光音、心音、羽音、詩音に稽古をつけているが、羽音と詩音はかなり苦戦している
畳みと正座が苦痛で仕方ないらしい

「じゃ、初めにお茶を点ててくれ」
「はい」

総二郎は場所を心音に明け渡す
その時、ふわりと何かが香る
自分の物でも心音の物でもない、何かの香りが、、

心音はいつも通りお茶を点てる
そこに何のミスも見られない
とても綺麗な所作だ

そして総二郎の前にお茶を置いた
再び香る微かなフレグランスの香りに、総二郎の心は乱される

今日も古参の婆さんに結婚の話をしてきたところだ
もうすぐ40歳になる家元の結婚に反対する者は誰一人としていない
だが相手を聞くと、皆が異論を唱える

自分がロリコンと思われるのは仕方ない事と耐えられるが、心音が悪く言われる事には耐えられず、丁寧に説明をする
自分にとって心音の存在がどんなに必要で大切であるかを
そして疲弊して帰宅し、心音のお茶で癒して貰おうと思っていたのだが、、、

「お前の茶には、雑念が入っているな」
「えっ?」

思ってもいない言葉が総二郎の口から飛び出す
雑念が入っているのは自分の方で、お茶は何時ものように美味しかったのに

「学校で何があった? 色男に告白でもされて良い気にでもなったか?」
「そんな事は、、」

それは総二郎が日々思う不安だ
日本に帰国してからの心音は、日に日に美しく聡明になっていると総二郎の目には映る

「抱きしめられたか? お前から男物のフレグランスの香りがする。 それにも気付かずお茶を点てるとは、あってはならない事! 抹茶の香りが消されるからな!」

心音はグッと唇を噛みしめる
抱かれたわけでは無いが、自分の不注意で抱きすくめられたのは事実
その時、香りがついてしまったのだろうが、それに気付かなかったのも事実

何故なら少しでも早く西門邸へ行きたかったから
もしかしたら、総二郎に会えるかもしれないと思ったから
何より、総二郎以外の男性など全く眼中になく、顔も声も香りも記憶の片隅にもないのだから

心音は両手をつき、ガバッと頭を下げる

「申し訳ありません」

その声は震え、畳にポタリポタリと雫が落ちた





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12 Comments

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-  

2019-05-16 09:29

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2019-05-16 09:37

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りおりお
Re: おち〜様

りおりお  

2019-05-16 09:58

小さかった心音ちゃんも14歳に!
中等部でもかなり目立つ程の容姿になってきているみたいですね
まあ、バックグラウンドも申し分ないし、目立たない訳がない!

そして…総ちゃんはジリジリと胸を焦がす思いのようです
さて、泣かせてしまった総ちゃん
どうする?

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りおりお
Re: ゆきり〜様

りおりお  

2019-05-16 10:02

総ちゃん、大人気ないですよね
でも…それだけ心音ちゃんが美しく成長している証拠でしょうね

大の大人が嫉妬?しかも、総ちゃんみたいな完璧な人が?
なんですけど、恋すると誰もが束縛したくなる
特に中学生の心音ちゃんの周りには、若い男子がウジャウジャですからね
ハラハラもしますよねぇ

さて、泣かせた総ちゃん
どうする?

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-  

2019-05-16 10:07

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りおりお
Re: ビオ〜様

りおりお  

2019-05-16 10:19

総ちゃんの余裕が無くなる程、心音ちゃんは美しく成長しているんでしょうね
そんな心音ちゃんは、まだ中学生
同年代の男性がウジャウシャいると思うだけでハラハラするんでしょう
本気になると嫉妬深くなるんですよね(笑)

泣かせてしまった総ちゃん
どうする?
泣かせておきながらオロオロするんでしょうね

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-  

2019-05-16 10:32

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-  

2019-05-16 11:52

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りおりお
Re: り〜様

りおりお  

2019-05-16 17:51

ちょっとブレイクタイムとして、番外編を入れました
Rainのお話が、あまりにも重かったのでね

さて総ちゃん
嫉妬です(笑)
心音ちゃんから香る香りに、年甲斐もなく当たってしまいました
それだけ心配なんでしょうね
綺麗になっていますから

さて…泣かせちゃったよぉ
どうする?

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りおりお
Re: シマエナ〜様

りおりお  

2019-05-16 18:02

楽しんでくださいね

心音ちゃん、綺麗になってきています
だから総ちゃんは、心配でならない
嫉妬ですよねぇ
年甲斐もなく!と言うかもしれませんが、恋愛に歳は関係ない!(by光音)
嫉妬は誰でも起こりうること
特に好きで好きで仕方ない場合はね!
って事で、大好きな心音ちゃんを泣かせてしまった総ちゃん
どうする?

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2019-05-17 09:11

このコメントは管理者の承認待ちです

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りおりお
Re: ゆきた〜様

りおりお  

2019-05-17 11:19

総ちゃんも、心音ちゃんの前では、ただの男になるんですよね
それだけ好きなんでしょう
自分の気持ちを認識し、こうして皆に認められ、その日を指折り数える日々

守りたいという気持ち
一緒に過ごせるという嬉しさ
そして何より、自分だけを見ていてほしいと思う束縛
いろいろ生まれているようです

嫉妬する総ちゃんも、わたし的には萌えです

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