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長い春<完>

3 一問目

6
フランスに帰った俺は、すぐに机の引き出しからそれを取り出す
それは小さな無地のスケッチブック
その中は、余りにも楽しい想い出ばかりが蘇り、フランスへ来てからは見る事を躊躇っていた
その紐を久しぶりに解く
そして表紙を開けた

《 花沢邸であたしが絶賛した飲み物 》

真っ白い紙の中央に、たった一行
まるで問いかけの様な文章

確かにプレゼントにしてはおかしな品だ
手紙とかならわかるが、こんな問いかけを寄越すなんて

でもあの時の俺には判らなかった
司の元へ行ったと思い込んでいた俺には、単なる楽しかった思い出を綴った物だと思い込んでいた

俺は再びつくしの文字をじっくり見る

答えはすぐに判った
ルイボスティだ

俺は、その当時を思い出す

あれはまだ牧野が大学に入ったばかりの頃だった
どの講義を取ろうかと複数の講義で悩んでいた時、俺の家へ連れて帰った

受講する講義によって教科書が変わる
その教科書も一冊数万円する物もあるし、滅多に使わない物もある
もし俺の家にその教材があるのなら、それを使えば良いんじゃない?
講義も受けることが出来るし、教材代もかからない
もちろん俺はもう、その教材を使う事は無いしさ
と提案したからだ

その時、出されたお茶がルイボスティ

「あれ? これ紅茶? なんだろう? なんか普通の紅茶よりも味は薄いんだけど香りが良い。」
「それルイボスティだってさ。」

「ルイボスティ?」
「そっ。 味は紅茶よりも渋みが少なくてカフェインゼロ。 
煮出す時に独特な香りがするらしいよ。 
それが好きって言う人もいれば、受け付けないって人もいるらしい。」

「そうなんだ。 あたしは好き!」
「紅茶と違って渋みとか濃い味とかにはならないんだってさ。 爽やかな薄味って感じ?」

「そうそう。 薄いんだけど美味しい。 何にでも合いそう。」
「ノンカロリーで糖質ゼロだから、ダイエットしている人も好んで飲むらしい。
しかも整腸作用や便秘改善にもなるらしいよ。」

「へぇ。 凄いね。」
「まっ、牧野には関係ないかな? それ以上痩せたら、皆から心配されるだろうし。」

「だね。 でも美味しい。」
「だったら、その茶葉を持って帰りなよ。 後で佳代に伝えておくから。」

「ほんと? ほんとに良いの?」
「あぁ。 いくらでも。」

そしてホクホクして持って帰った牧野
それから数日後の大学で、、

「あのね。 この前、スーパーでルイボスティの茶葉を買ったんだけどね、類の家のと全然違うの!! 
メーカーが違うのかなぁ。」
「さあ? じゃ、俺ん家に来てみる? 直接佳代に聞いてみたら?」
「うん。 じゃそうする。」

という事で、大学の帰りに俺の家へ寄った
真っ直ぐ佳代の元へ向かう牧野を見ながら、俺は部屋へ入ったんだが、暫くしてがっくりと肩を落とした牧野が入ってきた

「分かっていたんだけどね、、スーパーで売っているような茶葉じゃない事ぐらい。」

だろうな、、と思ったが、敢えて声には出さなかった

「じゃ、持って帰りなよ。」
「そんな事出来ないよ。 一応、お客さん用の茶葉なんでしょ? 
かなりお高いんでしょ? 
この前も沢山貰って帰ったのに、また貰うなんて、、なんかたかってるみたいじゃない? 
せめてお金を出すから分けて下さいって言えたら良いんだけどね、きっと100グラム何万円もすると思うとねぇ。」

その時、俺の頭の中には二通りの返事が思い浮かんだ

一つは、値段を安くして牧野に与えると言う物
多分、牧野の考え通り100グラム何万円もするのかもしれないが、牧野には数百円と嘘をつけば良いだけの事
それなら牧野が遠慮することなく、茶葉を買うことが出来る
でも俺は、もう一つの方を口に出した

「じゃあ、、暇があったら飲みにおいでよ。 何なら水筒を持って来るとか?」
「あっ! それ良いかも!!」

ルンルンとした表情の牧野に、俺の心は勘違いを始めた

普通は、彼氏でもない男の家に上がりこむ事を拒むはず
キッカケは講義の教材を貸すとして呼んだだけ
そこにはきちんとした理由があった
今回も茶葉の購入先と値段を聞くと言う理由
でもそれ以降は?

単に『喉が渇いたからルイボスティを飲みに来ました』と言う理由で親友の家に来る?
それとも、俺が牧野の家に上がりこむ事も多々あるから、自分もと言う気軽な気持ちから?

もしかして、、
もしかして、、

この頃から自分に都合の良いように感じ始めた思考はどうする事も出来ず、だんだんと膨れ上がりはじめた
そしてそれは今まで以上に牧野の家へ上がりこみ、バイトの迎えに行って、大学の講義の相談に乗り、、
いつの間にか牧野の隣にいる時間が増えたんだ

思えば、、これがきっかけか?
今までは、彼氏の親友と言う立場を守ろうと必死だった
キッパリ振られている
木端微塵だった

それでも『付き合うとかどうでも良い』と言う言葉で傍に居続けたのは自分だ
そこには、また俺を見てほしいと言う願いがあったのかもしれない

とにかく大学とバイトの邪魔にならない程度に、傍にいたのは事実だ
牧野の言う『空気のような存在』にいつの間にかなっていたとしても不思議ではない
決して強く迫った事は一度も無い
かと言って、きっぱり引いた訳でもない

あやふやな状態のまま、、親友として傍に居続けた


類は、次のページをゆっくり捲った




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6 Comments

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-  

2019-08-23 09:26

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-  

2019-08-23 09:52

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りおりお
Re: ビオ~様

りおりお  

2019-08-23 10:32

つくしちゃんが類君に渡したものはスケッチブック
そこには、たった一行の言葉が書かれていた
それを見た時、すぐに二人の楽しかった思い出がよみがえる類君

さて、なぜつくしちゃんはそんなものを類君に送ったんでしょう?
8年前は、司君の元へ行くと思っていたから詳しくは考えなかったけど、
今はいろいろ深読みしますよね

つくしちゃんは何を言いたかったのか?
そして類君は、それに気づくのか?

明日もお楽しみに
一緒に謎解きしてくださいね

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りおりお
Re: り~様

りおりお  

2019-08-23 10:35

つくしちゃんが渡したものはスケッチブック
そこには、意味深な言葉が書かれている
たった一行の込められた思い
類君は気づくかな?

少なくとも、司君の元へ行くときにはすでに心が決まっていましたからね
それを考えると、ここにヒントが隠されていると思いますよねぇ
さて何だったのかな?

一緒に考えてくださいね

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-  

2019-08-23 10:37

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りおりお
Re: あや~様

りおりお  

2019-08-23 13:03

うふふっ、、
分かりました?

つくしちゃんが渡したスケッチブック
そこに書かれている文字を見て、類君は昔を思い出しています
すぐ思い浮かぶところがすごいですよねぇ

果たしてつくしちゃんは何を伝えたかったのか?
あや~様のご想像通りになるでしょうか?

ぜひ明日も楽しんでくださいね

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