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想い出さがし

6 引っ越し

10

3月末
つくしは、荷造りをしていた
英徳大学の合格通知が届き、4月から西門邸で暮らす為だ

「本当に行くのね?」
「うん。」

千恵子はそれ以上何も言えず黙り込む
晴男が亡くなり、母子家庭でもここまで安定した生活が送れたのは、全て家元のおかげ
その家元から、面倒を見るから安心して預けて欲しいと言われたら、何も言えない

「私の事は気にしないで、西條さんと一緒に暮らせば?」
「つくし、、」

西条とは千恵子のお相手だ
そしてその西条との再婚に、つくしが乗り気でない事は判っている
今も父親は晴男一人と思っている事も
休日や暇を見つけては海岸へ出向き、漂着物の中から晴男の物を探しているのだから

あの事故の一か月後、晴男が被っていた帽子だけが漂着した
それは今もつくしの宝物だが、それ以外は一切見つかっていない

「ママには感謝している。 一生懸命仕事をして、こうして私を育ててくれて。
もちろん西條さんも良い人だと思う。 優しそうだし、何より支部の人だから間違いないよ。」
「じゃあ、、」

「でもお父さんと呼べるかと聞かれたら、まだ呼べない。 ゴメン。
それにママにとっても良い機会だと思う。 
西條さんと一緒に暮らしてみたら、嫌な部分が見えるかも知れないし。」

支部の人だから間違いないと言いながら、嫌な部分が見えるかも?と真逆の事を呟くつくし
やはりまだ時間が必要だと千恵子は感じる

「分かったわ。 とにかく向こうでは家元始め奥様やご家族に迷惑をかけないで頑張りなさいね。
家元の御好意を無にしないよう、勉強も頑張りなさい。 それとお手伝いもね。」
「うん。」

つくしは段ボールの一番上に、海岸に漂着した晴男の帽子を置くと、しっかりとガムテープで箱を閉じた



総二郎は春休みと同時に、あきらの別荘へ行くと言って出かけていった

「ほんとにあいつは、何時まで経っても遊び歩いてばかりだな。」
「大学生の間ぐらい大目に見ましょう? 茶道を行う時は真面目に取り組んでいるのですから」

元々は長男が後を継ぐ予定だったが、医大を受け家を出てしまった
必然的に総二郎が後を継ぐ事になり、その肩に重圧がかかるようになった
その頃から夜遊びが始まり、数日帰宅しない事もある

「明日は、つくしちゃんが来ると話してあったんだがな。」
「まあ新学期までには戻ってくるでしょうし、つくしちゃんは4年間この家で暮らすんですから、帰宅してからでも充分ですよ。」

「確かにそうだが、、」
「案内は光三郎に頼みましょう?」
「あぁ。 そうしよう。」

こうして翌日、つくしが西門邸にやってきた

「家元。 奥様。 お世話になります。」

つくしは元気良く挨拶をし頭を下げる

「合格おめでとう。 さあ中に。」
「疲れなかったかしら?」
と、夫妻はつくしを気遣う

「はい。 大丈夫です。」
「届いた荷物は部屋に入れてあるの。 さあこちらよ。」

長い廊下を渡り、奥の襖を開けると、畳の上にベッドと机とタンスとテレビと送った荷物
机の上にはパソコンも置かれている

「広い。 それに畳にベッドって、、。」
「あら? ベッドは嫌いかしら?」

「とんでもないです。 凄く憧れてて。 でも畳が傷まないかな?と。」
「毎日正座している所為か、普段は少しでも楽したいと言うか、我が家は皆ベッドを使用しているんだよ。
まあ他の人は知らない事だけどな。 床はフローリングよりも畳の方が温かみがあるから外せないんだ。」

確かに食事はテーブルに椅子だったし、リビングにもソファーが置かれていた

「メリハリですね。 確かに365日、ずっと家元でいるのは疲れますから。」

その面白い発想に家元は笑顔になり、雪乃はクスクスと笑う
そこに光三郎が帰宅した

「ただいま。 あっ、つくしさん。 合格おめでとう。」
「あっ、光君。 ありがとう。 今日からお世話になります。」

「こちらこそ。 あっ、この隣が総二郎兄さんの部屋で、その隣が俺の部屋だから。」
「つくしちゃん。 明日にでも付近を光三郎に案内させよう。 光三郎、悪いけど頼まれてくれ。」

「光君、大丈夫? 予定とかない?」
「大丈夫。 じゃ明日はデートだね。」
と、光三郎はウインク付きで告げる
その言葉に、つくしは目を見開く

「デッ、、デ~ト~~~!!」

つくしは素っ頓狂な声をあげる程の驚きだ
その反応に、光三郎は大笑いだ

「こらこら、つくしちゃんをからかうんじゃない。」
「そうですよ。 でもお願いしますね。」

夫妻は光三郎を諌めるが、既に仲良くしている事に安堵の気持ちも湧く

「男女が街をぶらぶらする事をデートって言うだろ? もしかしてデートやった事無い?」
「ないない! 全くない!」

全力で否定するつくしに、光三郎はプッと笑う

「じゃ、俺がつくしさんの初めての相手だね。」

ただでさえ爽やかイケメンの光三郎
その光三郎から『初めての相手』とか『デート』とか言われ、つくしは真っ赤になり口をパクパクさせる

「ぷっ! つくしさん、、面白い、、」
「光三郎。 あまりつくしちゃんをからかわないでくれ。」

「ごめんごめん。 別にからかった訳じゃないんだけど、取り敢えず明日はつくしさんとランチしてくる。」
「夕食までには帰って下さいね。」

「分かった。 って事で、明日は宜しく!」
と、光三郎は手を差し出す
その手を、つくしはしっかりと握る

「こちらこそよろしくお願いします」



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10 Comments

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2019-09-20 09:27

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2019-09-20 09:28

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2019-09-20 10:39

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2019-09-20 10:50

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2019-09-20 11:39

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りおりお
Re: ビオ~様

りおりお  

2019-09-20 13:55

少しずつつくしちゃんの現状が分かってきましたね
つくしちゃんの父親は海で亡くなっている
母親との関係がぎくしゃく
気分転換と言うか母親のそばに居たくなくて家元の申し出を受けた様子
そして無事合格を勝ち取って東京へ

西門家では、光三郎とはすでに打ち解けています
同じ年ぐらいの人と仲良くなれたことは、つくしちゃんも息が抜ける場所が出来たはず
でもねぇ、、総ちゃんは頑なです
光三郎ともつくしちゃんの話をしないし、嫁候補と今でも思っている節がある

さてどうなるかな?
話してみれば印象も変わると思うんだけど

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りおりお
Re: ゆきり~様

りおりお  

2019-09-20 13:59

つくしちゃんと母親との関係がぎくしゃく
それを見かねた家元が、つくしちゃんに手を差し伸べたことが分かりました

つくしちゃんも、今の自分が嫌なんじゃないでしょうか?
母親の気持ちが分からないんでしょうね

この距離を置く時間の間に、二人の気持ちが少しずつ和解できると良いですね

そして家元は、どうしてそこまで親身になってくれるのか?
お世話になったとは、どういうことなのか?
とりあえず光三郎君と仲良くなり、つくしちゃんも気分が楽でしょうね
少しでも大学生活が楽しいものでありますように

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りおりお
Re: てる~様

りおりお  

2019-09-20 14:02

家元がお世話になった人は、間違いなくつくしちゃんのご両親でしょうね
だから、つくしちゃんの事を親身になっているんでしょう

何があったのか?
前回の話で光三郎君が聞いていましたけど、深くは語りませんでした
あまり知られたくないのかも?

とにかくつくしちゃんは、大学生活に入ります
光三郎君と仲良くなれた事だけでも、救われるでしょうね
年の近い人との会話は気負わずにいられるから

さて、、類君との接点が出来ましたけど、何時登場するかなぁ、、
これ、、今のところ総つくの要素しかない、、

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りおりお
Re: り~様

りおりお  

2019-09-20 14:05

つくしちゃんの父親はすでに亡くなっています
そして、母親とはぎくしゃくしています

そんな中、距離を置いて冷静になる事にしたつくしちゃん
家元もいろんなものを見て感じてくれれば、、との思いのようです
もちろん大切な人の娘さんですから、都会で一人暮らしさせることは出来ないのでしょう
それなら自分の家できちんと面倒を見たいんでしょうね
年頃の娘ですからね

総ちゃんは、相変わらずつくしちゃんを認めていない様子
まだ顔を合わせていませんし、話もしていません
その点、光三郎君がつくしちゃんに急接近?
つくしちゃんも同じ年頃の人と仲良くなれて、息がはけるでしょうね

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りおりお
Re: 麦~様

りおりお  

2019-09-20 14:08

類君不足ですみません
なかなか出てくれません
もう少しお待ちください
決して総つくではありません(たぶん、、)
頑張ります!

週末は台風の接近があり、どうなるのやら?
15号の時は千葉県が大変な惨状でしたから、今回も侮ってはいられないのですけど、どうすることも出来ません
あまり風が吹きませんように、雨が降りませんように、、と願うばかりです
そんな中、春日大社ですか!!
お気をつけてくださいね
当日にならないと、どれだけの風雨か分かりませんものね

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