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さくらいろ

49 一触即発

2019/11/02
想い出さがし<完> 8

類は昼休みにつくし宛てにSNSを送った

<まだ総二郎を見かけないんだけど、昨日は普通だった?>
<実は昨日いろいろあって>

つくしからの返信に、類は眉根を寄せる
自分達の付き合いに、文句でもつけたのだろうか?
もし納得がいかなかったとしても、当たる相手は牧野では無く俺の方ではないか?と思う

<昨日の詳しい話を教えてくれない? 今から時間ある?>
<今からランチで外に行く所>
<一人?>
<うん>
<じゃ一緒にランチしよ? 門を出て左に歩いてて>
<分かった>

類は、サッと携帯を閉じると、司とあきらに向かって告げる

類「じゃ、今日は帰るから。」
と手を振りラウンジを後にした

駐車場へ向かうべく中庭を横切っていると、向こう側から総二郎が歩いてくる姿が見え立ち止まる
総二郎も類の姿を捉え、視線を外す事無くまっすぐ類へ向かって歩き、1メートル前でピタリと止まった
二人は何時ものように挨拶を交わすでもなく、じゃれ合うでもなく、ジッと互いを睨み付けたままだ

その二人の雰囲気は、直ぐに周りの人達にも伝わり、周囲は水を打ったように静まり返った



つくしは、門へ向かって歩いている所だったが、周囲の人たちがピタリと動きを止め一点を見ている事に気付く
何だろう?とそちらを見ると、中庭に類と総二郎の姿が見える

いつもなら「きゃ~」と言う女性の興奮した声が、あちこちから飛び交うのだが、それすら聞こえない異常な雰囲気
しかもその二人も微動だにせず睨みあっているように見える

つくしは直ぐにスカートを翻し二人の元へ駆け出した
ただでさえ総二郎がナーバスになっている事を知っている
その事を、類に上手く伝える自信が無く、昨日は<疲れた>という理由をつけ、詳しい話をしなかった
SNSよりも直接会って相談した方が早いと思ったし、翌日には何時もの総二郎に戻っているかもと期待もした
だが部屋にこもったままだった

その為、類からSNSが来た時は、相談できる良い機会と思っていたのに、、



類「遅かったね。」
総「あぁ。 いろいろ有って寝られなくてさ。」

類「それ、、俺の所為?」
総「あぁ。 きっかけはな!」

二人は再び睨みあう
すると総二郎はポケットからあの小瓶を取り出し、それを目の前に掲げる

総「これ何か知ってるよな?」
類「貝殻? それって、、」

総「こんな瓶に入れて、大切に飾ってんだぜ? しかもその辺の貝殻なんかをよ!」
類「返せよ! お前にとっては単なる貝殻かもしれないけど、俺達にとっては大切な思い出なんだから!」

その言葉に、総二郎の何かが切れた
それは『二人だけの大切な思い出』と言う言葉

自分の知らない二人だけの世界があり、その事実を知らないままそっけない態度を取る事で逆に気を引こうとし、同じ家に住んでいると言う安心感と茶道と言う共通の話題がある事からも、自分が一番有利だと知らぬ間に考えていた
所が、、横からトンビに油揚げをさらわれた格好だ

こうなってから自分の気持ちに気付いた間抜けさ
そこから茶道での失態
その上、家元からの最終通告

まるで今まで築き上げてきた自分の人生が、急速に転がり落ちていく感覚
その元凶は紛れもなく目の前の男!

総「あぁ。 そうだな。 二人でコソコソ会ったりしてよ!」
類「だからコソコソしていないって言っただろ!」

その一歩も引かない遣り取りの二人の間に、つくしが飛び出す

つ「それ返して!」

途端、二人の遣り取りを固唾を呑んで見守っていた人たちは驚く

『あれ誰?』
『牧野さんじゃない?』
『また牧野さん?』
とひそひそと伝言ゲームのように周囲に広がっていく

つくしは総二郎の目をジッと見つめたまま、手を前に出す

つ「返して。 総二郎さんにとってはちっぽけな物かも知れないけど、私にとっては大切な物なの。」

それは総二郎には判る事の出来ない物だと言われたように感じ、深く傷つく

総「こんな物、、、こんな物、返してやるよ!」
と言うと、総二郎は遠くへ向かって投げた
それは弧を描き、噴水の中央の彫刻に当たった

ガシャンッ

小瓶は砕け、パラパラと貝殻は噴水の中へと落ちていく
それを呆然と見つめるつくし

類は怒り心頭だ
その為、総二郎の胸倉を掴む

類「お前、わざと?」

それに対する総二郎は挑む姿勢だ
その類の手を払いのけ服の乱れを直す

総「偶然に決まってるだろ。」

悪びれた風も無い態度に、類は更に掴みかかろうとするが、その手を司が掴んだ

司「おい。 お前らどうしたんだ?」
あ「二人とも、落ち着け!」

あきらは総二郎の方を押さえている
二人は中庭の状況を聞きつけ、急いで飛び出した所だ

司「何があったんだよ。」
あ「かなり目立ってんぞ!」

目立っていると言う言葉に、類は冷静さを取り戻す
確かに周りは大勢の生徒に取り囲まれている
牧野は目立つ事を嫌っていたのに、、とつくしの姿を探す類

類「あれ? 牧野は?」
司「へっ? 俺が来た時には、牧野の姿はどこにも、、、あっ!」

司の驚きの声に、その視線を辿ると、噴水の中にじゃぶじゃぶと入っていくつくしの姿が見えた




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Comments 8

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2019/11/02 (Sat) 09:26
りおりお

りおりお

Re: ビオ~様

そうですよね

凄いお茶を煎れることはできるんです
でも、起伏が激しいんですよね
だから、その時々によってお茶の味が変わると思うんです

まず精神統一ではないですけど、どんな状況でもお茶に向き合う時は冷静になれる事が大切なのでは?
それが分かっていない今は、まだまだ立派なお茶にはならないでしょうね

早くその事に気づいて欲しいです

2019/11/02 (Sat) 09:30

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2019/11/02 (Sat) 09:42

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2019/11/02 (Sat) 09:43
りおりお

りおりお

Re: り~様

総ちゃん、嫉妬から怒りの矛先をつくしちゃんと類君にぶつけました
もちろん類君は、総ちゃんと話をしようと思っていたところです

でもね、、
総ちゃんの行動に許せないものを感じてにらみ合い

総ちゃん、、あんたが悪いんでしょ?
何で初めからつくしちゃんに優しく接していたかったのか?
普通に生活をしていれば、類君とつくしちゃんが出かけていたことぐらいすぐに分かったはず
それにね、つくしちゃんの生い立ちを家元から聞いているときも総ちゃんはいなかった
総ちゃんの行動で褒められた物はない
だからお茶の味が全然ダメだった
そのすべてを二人に押し付けるなんておかしい、、
だけどそれに気づかないようです
こうなったのは二人のせい、、と責任転嫁
さてどうなるかな?

2019/11/02 (Sat) 15:35
りおりお

りおりお

Re: シマエナ~様

総ちゃん、、
何をしでかすんですかぁ

イライラしているのも分かるし、つくしちゃんと類君の二人の親密そうな様子を見てかっとなるのも分かる
でも、大切な物を壊す必要はない
それすらも今は分からないようですね

小瓶が壊れ、中から大切な貝殻が散らばりました
迷わずそれを拾いに行くつくしちゃん
さて、、これで総ちゃんの怒りは収まったかな?

少なくとも、司君とあきら君も来てF4勢ぞろい
皆の注目の的ですね

2019/11/02 (Sat) 15:41

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2019/11/02 (Sat) 19:24
りおりお

りおりお

Re: ふ~様

ご指摘ありがとうございます
修正しました
自分ではなかなか気づかないので助かります
また気づかれましたら教えてくださいませ

そして、ここにきて総ちゃんが、、、
嫉妬の炎がメラメラと、、
その所為で、類君とつくしちゃんに怒りまくっています

この後の展開もお楽しみに

2019/11/02 (Sat) 21:08
りおりお
Admin: りおりお
こちらは二次小説『類つく』のお部屋となっております
そういった類の物が嫌いな方は、回れ右をしてご退場ください
ヤフーブログ『類❤だ~い好き』から引っ越して参りました
引き続き類君とつくしちゃんの幸せな姿をお届けできればと思っております
尚、ブロ友は現在受け付けておりません
想い出さがし<完>