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想い出さがし<完>

55 父親の思い

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手当てが終わった類は、直ぐにつくしの元へ移動する
そこには未だ俯いたままのつくしの姿

手当てされた右手は包帯が巻かれている物の、無傷だった左手はギュッと握りしめたままだ
その左手を自身の左手でそっと包み込む

類「牧野。 父親はずっとあんたの心に居る。
  たとえ声や言葉を忘れても、ずっとずっと心の中に居るから。」
つ「何で分かるの? 私の記憶の中には、写真の父親の顔しか浮かばない。
  この帽子を被った父親の顔しか。」

これ程憔悴するつくしの気持ちも判る
たった一つの形見だ
父親との繋がりが深い海へ毎週行っていたぐらいだし、どれだけ父親を愛しているのかも

類「それでも、、あんたの心の中に居るのは間違いない。 それも、ずっと、、永遠に。」

つくしは無言で首を横に振る
そんな事無い、、と否定するように

類「それにきっと前を向け!と言っているんじゃないかな?
  あんたはずっと立ち止まったままで、必死に父親との思い出を探し続けているだろ?
  だから父親がこんな帽子に縛られるな!って事で、燃やしたんじゃない?」
つ「それは総二郎さんが、勝手にごみ箱に捨てたから。」

つくしは小さな声で呟く
そんなつくしの姿を見るのは忍びない

もちろんつくしの言い分も分かる
総二郎がごみ箱に捨てなければ燃やされる事は無かった
だが総二郎をそのような強硬手段に追いやったのは自分の責任と考えないだろうか?
あげく、毎週出かけなければこうならなかった、、と付き合う事を否定し始めるんじゃ?
それだけは困る

それに母親との確執もある
頑なに拒む気持ちを少しでも和らげたい

類は言葉を選びながら告げる

類「確かにそうだけど、お父さんがそうなる様に導いたとしたら?」
つ「えっ?」

つくしはやっと顔をあげる
その頬には、行く筋もの涙の跡がある

類「でないとおかしいだろ? 総二郎だって無断で女の部屋に入るような奴じゃない。
  何かに導かれたとしか考えられないだろ? もしかして日頃から互いの部屋を行き来していた?
  それなら話は別だけど、、。」

類はチラリと気になっていた事を会話に盛り込む
そんな事、あるはずが無いと願いながら

つ「ううん。 今まで一度も部屋に入った事は無い。 それにノックすらされた事も無い。」

それを聞き、ホッとするが表情には出さず話を続ける

類「だろ? きっと牧野が自分を忘れず、ずっと思ってくれている事は嬉しかったはず。
  でもずっと立ち止まったままなのが気になっていた。
  それにお父さんは、亡くなってからもお母さんの事を心配していたはず。
  牧野が3歳って言ったら、お母さんもまだ20代かな?
  そんな若さで幼子との二人暮らしは寂しいだろうし苦労すると判っているからね。」

つくしはゆっくり頷く
それを見て類は話しを続ける

類「そんな中、お母さんは新しい人を見つけた。
  寂しさや不安などを解消し、そっと寄り添ってくれる人をね。
  それはお父さんにとって、凄く嬉しい事だったと思うよ?
  好きな人には、いつも笑っていて貰いたいし、幸せになって欲しいと思っているからね。
  牧野ももう分かるだろ? 恋ってドキドキするし、何をやっても嬉しいし楽しいし幸せだしさ。」
つ「うん。」

類「思うんだけどさぁ。 お母さんと会ったのって海岸だっただろ?
  それって、お父さんと西條さんと三人で散歩していたんじゃない?
  牧野と同じように、お父さんとの思い出を噛みしめながらさ。
  そして西條さんも、お父さんを思い続けるお母さんの事を、愛しているんだろうな。
  でないと、暑い日中に海岸を歩くはずが無いだろ?」

つ「西條さんは、穏やかで良い人。 
  家元の代わりにお茶の指導もしてくれて、学校の事とか友達の事とか、いろいろ聞いてくれて。」
類「うん。 父親が亡くなっている事を知っているし、寂しい思いを少しでも払拭させたいと言う気持ちだったんだろうな。
  それにさ、西條さんはお母さんの今後を心配したんだと思う。
  今は牧野がいるけど、牧野が結婚したらお母さんが一人になるからね。
  そしてお母さんも、牧野に優しく接する西條さんの事が、だんだん好きになったとしても不思議じゃない。
  子育ても協力してくれたんじゃない?」

つくしはゆっくり左手を開ける
そこには、帽子の切れ端が姿を現す

つ「私が意地を張ってたのかな? 
  ママが再婚したら、パパが寂しくなると思って、必死に忘れないように、
  何かお父さんに繋がる物を見つけなくちゃと思ってて。」
類「それは意地では無く優しさだよ。 
  あんたがそんなに優しい子に成長した事で、お父さんも満足したんだと思う。
  だからこの帽子の存在を消したかった。
  もちろん、これは俺の勝手な思い。 だけどこれだけは忘れないで?
  あんたは俺が幸せにする。 そしてお母さんも幸せになる権利がある。
  そのお母さんが心から幸せと思えるのは、牧野が二人の幸せを願った時だと思う。」

つくしは、ウンウンと何度も頷く

つ「ママには苦労している分、幸せになって欲しい。
  二人が結婚すると、私が邪魔者と言うか、疎外感を感じていたのも事実。
  でも恋をして、恋って素晴らしいなと気づけたのも事実。」
類「俺も初めて知った。 その相手が牧野で凄く嬉しい。
  もちろんこれからも一緒に歩いて行こう? 絶対に一人にさせないから。」

つ「うん。 ありがとう。」
と、ニコリと笑う

やっと笑顔が戻ってきたつくし
その唇に類はそっとキスをする

類「これから寂しかったり不安だったり悩んだりしたら、何時でも俺に相談して?」
つ「うん///。」

つくしは、ここで初めて類の頬のガーゼに触れる

つ「痛い?」
類「全然! 名誉の負傷だし!」

つ「痕が残ったらどうしよう。」
類「俺は気にしないけど、、あんたは困る?」

つくしは直ぐに両手を横に振る

つ「ううん。 類は類だもん。」
類「良かった。 それが聞けてホッとした。」
と告げると、再びソッとキスをした



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8 Comments

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2019-11-08 09:30

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2019-11-08 09:40

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2019-11-08 10:04

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2019-11-08 10:52

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りおりお
Re: ビオ〜様

りおりお  

2019-11-08 14:28

つくしちゃんは、恋をして初めて恋の良さを知ったのでしょう
だから母親の気持ちも理解できた
意地を張っていた事も分かった

まあ…類くんの説明が良かったのでしょうね

帽子は無くなっても、つくしちゃんの中にパパはいますから!

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りおりお
Re: ゆきり〜様

りおりお  

2019-11-08 14:30

類くんは、やれる男です!
恋すると類くんは頼もしくなりますよね
しかも…ずっと支えてくれるんだから羨ましい(笑)

つくしちゃんも恋を知って初めて母親の気持ちに気づいたかな?
一人でいることの寂しさは計り知れないですからね

さて…後は総ちゃんとの対面かな?

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りおりお
Re: り〜様

りおりお  

2019-11-08 14:32

類くんも必死ですよね
つくしちゃん…恋を止める!とまで総ちゃんに宣言していたから!

でも…なんとか丸く収まりそうです
もちろん、総ちゃんともキッチリ話をつけないとね

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りおりお
Re: mayumi〜様

りおりお  

2019-11-08 14:33

類くん、頑張りました!
まあ…つくしちゃんのことを考えての発言なんだけど、つくしちゃんを納得させられるんだから凄いですよね
これも恋の力でしょう!

後は総ちゃんと話し合うだけ
こちらも…問題なさそうですよね

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