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Jealousy<完>

16 偽名

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それから一週間後の日曜日
優紀と東谷が出来上がった指輪を取りに来た
そしてつくしの顔を見てビックリする

「どうしたの? その瞼」
「あぁ、、なんでもない」

「なんでもない事ないよね? 何があったの? 私に言えない事?」
優紀は少しキツイ口調で告げる

つくしは、曖昧な表情で笑うしかない

この一週間、なんとか仕事は熟してきたが、もう気持ちはボロボロだった
とにかく誰かに聞いて貰い早くスッキリさせたかった

「失恋」
「えっ? 失恋?」

「弄ばれて捨てられただけ」
投げやりに告げながらも、その瞳は既に潤んでいる
そんな表情を見せるつくしを、優紀は、このまま放っておけるはずがない

「ねぇ。 今日は仕事何時まで?」
「18時」
「じゃ、うちにおいで! ねぇ、良いよね?」

優紀は隣の東谷に確認をとる
その東谷も、つくしの事が心配でならない
まだ数回しか会っていないが、笑顔が印象的な女性だったからだ

「もちろん! 牧野さん、仕事が終わったらおいで? 
話を聞く事ぐらいしか出来ないけど、少しでも吐き出した方が楽になるだろうし。」
「うん。 おいで。」

その東谷の言葉に、優紀も追随する
普通のつくしなら、身重の優紀の体調を考え断るところだが、今はその申し出がありがたく感じる

「うん。 ありがとう。 ごめんね。 忙しい時期なのに。」
「ううん。 全然大丈夫だから。」

という事で、急遽仕事終わりに二人の住む賃貸マンションへと向かった
来週はいよいよ二人の結婚式
妊娠発覚後、すぐ籍を入れ一緒に暮らしていると聞いたが、今一番忙しい時期だと思うと申し訳ない気持ちだ
だが、少しでも早く楽になりたかった

ピンポ~ン

インターホンを鳴らすと、すぐに優紀が出てきた

「いらっしゃい。 早く入って。」
「うん。」

つくしは中に入ると、持参してきた紅白のワインを東谷に渡す
箸より重い物を持たしてくれないと、以前優紀から聞いていたからだ

「突然すみません。 
花沢の社員に花沢ワインを持参するのもどうかと思ったんですが、このワインは評判が良いので。」
「こちらこそ気を遣わせて申し訳ない。 さっ、どうぞ座って。」

東谷に勧められ、つくしは腰をおろす
その机の上に、優紀は料理を運ぶ

「お腹空いてるでしょ? 食事しながら話をしよ? とことん聞いてあげるから。」
「ごめんね。 料理まで用意してもらって。」

「ううん。 この料理もデパートで買ってきた物なの。 私はチンしただけだから。
それよりハイッ! たまにはアルコールを飲みな!」
とつくしの前に缶チューハイを置く

アルコールに弱いつくしを知っている為、アルコール度数は3パーセントと軽い物だ
それでも、ほろ酔いの方が口が滑らかになるし、吐き出しやすいと考えての事だ

「ありがとう」

つくしは缶チューハイをコップに移し、半分ほど飲む
その間に、優紀が料理を数種とりわけ、つくしの前に置いた

それを摘まみながら、類との出会いから語りはじめる
優紀も初めて耳にする話で驚く
つくしに彼氏がいた事すら知らなかったからだ

「ねぇ、その人、本当に花沢の社員?」
「うん。 東谷さんと同じ社章がスーツに付いていたから」

社章がついているのなら、間違いなく花沢の社員だ
東谷は、そんな社員がいた事に申し訳なく感じる

「酷い事する奴だな。 そんな男が社員の中にいると思うと恥ずかしくなる。 
ほんと海外営業部の奴は何を考えてんだろう? 
どうせ出張先でも、いろいろやってるんだろうけど、同じ男として許せない!」
と、憤る

「ねぇ、、その人を問い詰める事は出来ない?」
と、優紀は東谷に問う

東谷も何かできないかと思案顔だ
その間も、優紀の怒りは収まらない

「何か腹が立ってきた。 
最初っから軽い気持ちでつくしに声をかけ、チャンスを窺っていたって事でしょ? 
そうしたらつくしの手料理が以外にも美味しくて、無料飯食い要員として置いておいたわけでしょ? 
キス止まりだったのも、そっち方面の彼女は既に間に合っているからでしょ? 
でないと、ベッドがあるのに三か月もの間何もしないっておかしいじゃない!!」

東谷は、初めて見る優紀の激しい憤りの姿に驚きつつも、新鮮な一面を知り嬉しく思う
それは親友想いで、情に厚い一面
その優紀の口調とは対照的に、落ち着いた口調で東谷は問う

「その人のフルネームは? 同期に尋ねれば、そいつとコンタクトが取れると思う」
「確か、、、花沢類って言ってたと思う。 あたしは『類』と名前で呼んでいたから。」

その名前に、東谷は驚きを隠せない

「そいつ、、本当に花沢類と名乗った?」
「はい」

「やられた!! その名前は、うちの専務の名前だ」
「「えっ!!」」

つくしと優紀は同時に声を上げ驚く

「うちの専務は血も涙も無い冷徹で恐い人なんだ。 
その専務の笑顔なんて誰一人見た事が無いし、人前で疲れたとか弱音を口にするはずがない。」
「という事は、偽名?」

優紀は信じられない、、といった口調で呟く

「それ以外考えられない。 偽名を使い別人になりきって、牧野さんに接触したんだよ。」

キッパリと告げる東谷
もちろんつくしもそうだろうと確信した

いろいろな名前を使い、女性に声をかけ、遊んだあとはポイ捨てする
その後、足がつかないよう良く考えられた策略
それにまんまと引っかかっていたと分かった瞬間だ

「つくし! その人の写真はない? 顔さえ分かれば、そこから本名が分かるんじゃない?」

元々外でのデートは数える程しかない
そのデートも、並んで手を繋いで歩くだけでドキドキし、写真を撮ると言う発想に至らなかった

「一枚も撮ってない。」

今更だが、写真の一枚ぐらい撮っておくべきだったと後悔する
その言葉に、優紀も東谷もガックリと肩を落とす

「つくし! 飲もう!! とりあえず体の関係をもたなかっただけ良かったと思おう!」
「そうだな。 そんな男の屑なんて、早く忘れた方が良い。」

「出会いなら、これから沢山あるし、なんなら私達が出会った婚活運営会社を紹介しようか?」
「あそこは一人一人親身になってくれるし、こうして良き伴侶に巡り合える可能性もあるから」
と、東谷と優紀は見つめ合い、ニコリと笑う

つくしも二人に話しを聞いて貰え、少しスッキリした
それにあの人は生粋の悪と分かったし、泣く価値も無い人
優紀の言うとおり、深い関係に至らなくて良かったと思おう
と、前向きになることが出来た




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8 Comments

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2019-12-02 09:25

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2019-12-02 09:47

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2019-12-02 10:31

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2019-12-02 12:10

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りおりお
Re: ビオ~様

りおりお  

2019-12-02 13:48

つくしちゃんの話を聞いた東谷さんは、偽名を使った生粋の悪!となりました

そりゃあねぇ、、
会社での類君と、つくしちゃんの前の類君では全然違うんですもんね
誰も同一人物だと思いませんよ

でもつくしちゃん、、
これですっきりしたかな?
少なくとも、そんな変な人と体の関係を持たなくて良かった
そう思わないと忘れられないですよね

既に過去の人!と思おうとしているつくしちゃん
類君はこのままで良いのかなぁ

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りおりお
Re: まりぽ~様

りおりお  

2019-12-02 13:52

花沢類と言えば、花沢物産に働いている人ならば誰もが知っている人物
その人の性格は、目で人を殺せるほどの人で融通の利かない人
だから、つくしちゃんと付き合っている人が同一人物だとは思いませんよね

つくしちゃんも、最低最悪の人!と思う事で、吹っ切ろうと思っています
既に類君は他の人とデートしているし、現場を見ていますからね
言い逃れは出来ない事実です

類君、、
どうするんでしょう?
このままだと、本当に別れることになるんですけどね、、

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りおりお
Re: り~様

りおりお  

2019-12-02 13:54

会社内での類君と、つくしちゃんの前での類君は別人のような感じですよね
それを誰も知らないから、こうして偽名を使った遊び人と断定されました
そうしないと、つくしちゃんの傷が癒せないのでしょうね
もちろん、誰も同一人物だとは思いません

つくしちゃんは、必死に類君との恋を忘れようとしていますけど、類君はそれで良いのかなぁ
折角で敢えて心許せる唯一の人なのにね

EDIT  REPLY    
りおりお
Re: 麦~様

りおりお  

2019-12-02 13:56

誰も類君が同一人物だと思いません
それだけ会社内での類君とギャップがありすぎるんでしょうね
笑顔なんて誰も見た事がないんですから
もちろん母親ですらね、、

つくしちゃんも、遊び人と思う事で類君の事を忘れようとしています
類君はこのままで良いのか?
良いわけないですよねぇ、、
じゃあどうすれば?

明日もお楽しみに

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