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兄妹ラプソディー<完>

39 叱らないで!

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類が病室へ入ると、つくしの枕元に偽両親が座っている
特に母親は心配そうに見つめている
それは自分を責めている表情だ

類が近づくと、父親がその場を代わってくれる

頬に張られた湿布や左腕の包帯が痛々しいが、今はぐっすり眠っている
無事でよかったが、その代償はかなり大きい

「ちょっと良い?」

類は、両親を横のソファーに誘うと、二人を前に告げる

「つくしの本当の母親が明日ここに来る」

二人はえっ!という驚きの表情後、安堵の表情に変わる

「それで、これだけの事件に発展した以上、もう家族ごっこは続けられない。」

二人も分かっていたようで黙って頷く

「とりあえず、今のうちに二人の今後の事を話し合ってくれば?
契約解除と共に解散となったら困るだろ? 特に父さんは!」

林は、類から初めて父さんと呼ばれ嬉しく思う
だが、同時に終焉を迎えることが、かなり寂しい

「そうします。」
「とりあえず、ここは俺が居るから、二人はあの家でしっかり話し合ってきて?」

母親は自分も残ると言いたいところだが、素直に従う事にする
解散となると家族はバラバラとなり、類とつくしの関係も終わることになる
その前に、類自身も今後の事を考える必要があるからだ

「類君も、後悔しないようにね。」
「ん。」

「じゃ、行きましょう? ふみさん。」

こうして二人は、類とつくしを残し病室を後にした

類は再びつくしの枕元へ行くと、椅子に腰を下ろし点滴のついた右手を握る
小さな手は温かい
腕も細く、こんな腕に良く刺さったものだと思うほどだ

でもあの時、確かにサッと腕を動かした
きっと大川がナイフを投げる場面が見えていたのだろう
咄嗟の判断だったんだろうが、そこに後悔は見られなかった

手術室に入った途端恐怖にさいなまれたのは、緊張の糸が切れたのか、俺が離れたからなのか、リアルにあの時の事を思い出したのか?

そういえば、車中でもずっと体を俺に預けていた

『お兄ちゃんに抱きしめられて幸せ』

と呟いていたが、あれは俺の事が?
だとしたら、かなり嬉しい

「早く目を覚ませ。 つくし。」

あんたと色々話をしたいんだ
これからの事も、俺の事も

類は握った手をギュっと握る
すると、遠慮がちに病室のドアが開き、麗が顔を覗かせた

「母さん、、」

類は小声で呟く
そして家を飛び出してから、未だ連絡をしていない事を思い出した

「母さん。 ちょっといろいろあって、、」
「この子が牧野つくしちゃんね。」

麗は類とは反対側の枕元から顔を覗き込む

「女の子の顔を殴るなんて、、」
と言いながら、つくしの頭を撫でる

「佳代から聞いたわ。 家族ごっこをしていたんですってね。」
「それは、、」

類としては、悪い印象を持ってもらいたくない
きっかけは司の悪ふざけだし、こうして不測の事態を招いた
とにかくきちんと説明しようと考えていると、、

「病室の入り口で司君たちから話を聞いたわ。
初日で終わるだろうと思っていたら、あなたがまだ続けたいと申しでたそうね。」

麗は、視線をつくしに向けたまま、類に問う
だが厳しく口調だ

「それは、、妹が路頭に迷うと思って。」

怒られる
呆れられる
そう思うと、類は素直に気持ちを告げたいと思う

「珍しいこともあるわよね。 あなたが他人の事を心配するなんて。」
「それは、、」

だが、どう告げればいいのか分からない

「それに、お弁当を食べているんですってね。 という事は、夕食もきちんと食べているのよね?
我が家では、シェフ泣かせなのにね。」
「それは、、」

今、自分の気持ちを告げても良いのだろうか?
ただでさえ、この事件のせいで母親の印象はかなり悪い
そう思うと、上手く言葉が出ない

麗は視線を類に向けると、きっと表情を引き締める

「サッと助けに行ったのは良いけど、詰めが甘いのよ! それに女性に助けられるってどういう事?
こんなか弱い女の子に傷を負わせるなんて最低よ! 先の先を見越して行動しなさいって教わらなかった?
それは単に経営学だけの事じゃないのよ? それに報告が遅い!
なんでもっと早く私に報告しないの? そりゃ初めは司君たちの悪戯だったかもしれないけど、三日、、ううん一週間以内に私に一報くれても良かったんじゃない?
今回の件だって、司君たちのボディーガードから連絡がなければ、私はまだ家で類君の帰りを待っていたわ!
こんな大変な事件を何も知らずにね!!」

麗は類を責めながら、だんだんとヒートアップしていく
その為、声が大きくなっていた

その声の大きさに、つくしの意識が少しずつ覚醒してくる

頭上でヒステリックな女性の声が聞こえ、その中に類という名前が耳に入った途端、つくしはパチッと目を開けた

すると、ベッドの両端に類と初めて見る綺麗な女性の姿が見えた
その女性が一方的に類を叱責している
そして類は、ギュっと唇をかみしめ、ただ聞いているだけだ

途端、つくしの庇護欲が湧く

「お兄ちゃんを叱らないで!!」



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6 Comments

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-  

2020-01-21 09:19

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-  

2020-01-21 09:26

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りおりお
Re: ゆきり〜様

りおりお  

2020-01-21 09:26

麗さんに押されまくりの類くん

確かに麗さんの口調からは、つくしちゃんや偽家族を罵倒する様子はありません
単に、類くんの行動を叱責しているみたいです
まあ、これだけの事件になったし、つくしちゃんは怪我をしていますしね

でもここからが肝心
類くんは自分の気持ちをきちんと母親に説明できるのか?
そしてつくしちゃんに告げるのか?

その前につくしちゃんが起きちゃったんですけどね(笑)
どうなるんでしょうね

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りおりお
Re: り〜様

りおりお  

2020-01-21 09:29

母親に、自分の気持ちをきちんと伝えたい類君
偽家族ごっこが自分に与えた影響
そして…妹に対する気持ちなど…

でも…麗さんがヒートアップしていますからねぇ
言いたくてもなかなか口を挟めない状況のようです

そんな中、つくしちゃんが目覚めてしまった!
どうなるんでしょう?
つくしちゃんと麗さんは初対面ですしねぇ

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-  

2020-01-21 09:29

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りおりお
Re: ビオ〜様

りおりお  

2020-01-21 10:05

麗さん、ヒートアップ!

類くんが行動的になったのは嬉しいし、好きな人がいる!と恋に目覚めたことも嬉しい
好き嫌いなく食事をしている事も、学校へもキチンと行っていることも嬉しい
それもこれも家族ごっこのおかげと分かっています

でも…内緒にされていた事が腹立たしいのでしょうね
しかも…女の子に怪我をさせているし、こうなっても類くんからの連絡が無かったんですから!

さて…どうなる?
つくしちゃんの意識が回復しちゃったんだけど…

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