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さくらいろ

9 晃司郎

2021/02/26
忘れない忘れないから 6


槙乃の紡ぐ言葉の重み
自分は何もできなかったという自責の念
だからこうして、、、今度は家族を守るために進ノ介になりきっている
それがどれほど辛い事だろうか

女を捨てて男を演じる
こうして男仕事をやる事も、そして振る舞いも、、何もかもが大変だ

「槙乃は自分を責める必要はない。 あんたが進ノ介を抱きしめていたから進ノ介は勇気を出せたんだと思う。
だから自分を責めるな!」

俺は槙乃の瞳を見つめて告げる
その槙乃の瞳に涙が溜まってくるのが分かる
が、、、必死に泣くまいと瞳を大きく広げる姿に、思わず自分の胸に引き寄せる

きっと、ずっと泣けなかったんだろう
泣く資格すらないと思っていたんだろう

そんな事ないのに、、
我慢しなくて良いのに、、

「我慢しなくていい。 泣きたいときには泣けば良い。」

すると槙乃は俺の腕をギュッと握ったかと思うと、ガバッと引き離した

「我慢なんてしていないから! それに早く薪を売りに行こう?」

そう告げた後、クルッと後ろを向き俺に背を向けた
我慢強いのか意固地なのか素直になれないのか
それともこの時代がそうさせているのか
そうしないと生きていけない時代なのか

「ほらっ、さっさと売って、、枝打ちをしようぜ。」

俺は木々を見上げる
ところどころ枝が落とされている
つまり枝を落とし数日乾燥させ、それを拾って売りに行っているようだ

女の子が枝打ち
考えるだけで大変そうだ

「分かった。」

俺は薪を籠に括り付け、それを背負うと槙乃の後をついて歩く
獣道のような細い道
いつもこんな人気のない場所で一人で作業をしているのか
獣もいるだろうし不審者もいるだろう

俺は進ノ介の腰にある鉈(なた)を見る
万が一の時は、あれで応戦するんだろうけど、、、かなり心許ない

獣道を抜けると、少し広い砂利道に出た
そこからポツポツと人とすれ違う
皆、笠と棒の様な杖を持っている事から旅人だと分かる

その道の先に『江戸38里、日光44里』と書かれた小さな石碑がある

「これ、、道しるべ?」
「そう。 この道が中山道だから。」

「へぇ。 この道が、、」

俺の時代では軽井沢から東京まで車で約三時間ほどか?
この時代だと何日かかるんだ?

石碑を過ぎると田んぼが見えて来る
そこには稲穂が見える
米を植えているようだ

「この米は全部年貢として納めるの?」
「そう。」

今、槙乃は進ノ介なんだから、こうして大っぴらな場所では進ノ介と呼ぶべきだよな?

「進ノ介は田んぼを持ってないの? 年貢とかはどうしている訳?」
「田んぼは全て地主である庄屋の持ち物。 田植えや稲刈りの時に村総出でやってる。
それを年貢として納めてる。」

という事は、、村単位で年貢として納めるわけか
まあその方が合理的か?

「という事は米は一度も口にしたことがない?」

すると槙乃はクルッと振り返る

「当たり前だろ!!」

その口調は怒りを含んだもの
俺としては深い意味で尋ねたわけではない
でも槙乃にしてみれば、盗んだ事ない?と聞こえただろうか?
だとしたら申し訳ない

米は年貢として納めるものと知っていても、稲刈りの後、ほんの一握りぐらい報酬としてもらわないのか?
それこそ豊作の場合とかならあり得るんじゃ?と思っただけだ
だがその軽い気持ちで放った言葉は禁句だったようだ

「ごめん。」
「いや。 俺もムキになった。 ごめん。」

槙乃は再び前を向き歩き始める
槙乃は素直な性格だと分かる
争いを好まないというか、すぐに謝ってくる

俺は後ろを歩きながら田園風景を見る
広い田園の中に数人の人が見える
そして数軒の家も

その間に畑も見え、米とは別の物が植えられている
槙乃の家の畑にも植えられていたが、あれは粟とかヒエとかいう物だろうか?

するとひときわ大きな家が見えてきた
蔵のような建物も見える

「あそこが地主の家。」

槙乃の言葉に、やっぱりと思う
それぐらい大きい

その家から二人の侍が出てきた
その侍を見送るためか、4,5人の着物姿の人達も出てきて、侍の姿が遠ざかるまで頭を下げていた
そしてパッと顔を上げた時、「えっ!」と思わず声が出ていた
何故なら司に似ている人物がいるからだ

俺の声が聞こえたのだろう
槙乃が立ち止まった

「どうかしたか?」
「あれ、、あの人、、、」

俺は司らしき人物を指差す

「あぁ、、晃司郎の事? もしかして晃司郎と知り合いか? いや、そんな訳ないよな?」

もしかして司もこの時代に?
俺がここに居るんだから司が居たとしても不思議ではない
でも槙乃の口ぶりから昔からの知り合いの様だし、、
やはり他人の空似だろう

すると晃司郎という人物が俺たちに気づき大きく手を振った




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晃司郎という名前ですが、、気づきました?
あきら、司、総二郎の名前から拝借しました
気づいたあなたは、鋭い!!です(笑)

お話の関係上、進ノ介になっている槙乃というややこしさ
分かりますかねぇ?
その辺、どう書いていいのか悩みつつ、、
とりあえず声に出すときは進ノ介、心の中で呟くとき&類と二人っきりの時は槙乃と書きますね


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Comments 6

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2021/02/26 (Fri) 09:27

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2021/02/26 (Fri) 09:57

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2021/02/26 (Fri) 10:10
りおりお

りおりお

Re: ビオ~様

この時代にも司君に似た人が登場
じゃあ総ちゃんとあきら君は?と思うのも尤もですね
どうなんでしょうか?

そしてこの時代でもお金持ちの家に生まれている司君に似た人物
つくしちゃんは貧乏だしね
逆にしても良かったんですけどね
何故かお姫様のつくしちゃんが全く想像できなかったんですよ(笑)

2021/02/26 (Fri) 12:30
りおりお

りおりお

Re: ゆきり~様

つくしちゃん、辛い日々ですね
どうしても男女では力の差がありますもんね
でも泣き言を言わない
その健気な姿に類君はそっと抱きしめて、、、
こんな風に抱きしめる行動をとる類君もレアですよね

そしてこの時代に司君に似た男性が!!
こちらはどんな性格をしているんでしょうね

2021/02/26 (Fri) 12:31
りおりお

りおりお

Re: シマエナ~様

そうなんですよ
晃司郎は三人の名前の合体です(笑)
でも見た目は司君に似ているみたいですね
じゃあ性格は?
どうなんでしょうか?

そして類君
槙乃の置かれた境遇に思わず抱きしめました
これ、、、惚れ始めてる?
どうなんでしょうか?
でも健気というか、男性なら守りたくなるタイプじゃないでしょうか?
今後の類君の気持ちにもご注目を

2021/02/26 (Fri) 12:33
りおりお
Admin: りおりお
こちらは二次小説『類つく』のお部屋となっております
そういった類の物が嫌いな方は、回れ右をしてご退場ください
ヤフーブログ『類❤だ~い好き』から引っ越して参りました
引き続き類君とつくしちゃんの幸せな姿をお届けできればと思っております
尚、ブロ友は現在受け付けておりません
忘れない忘れないから