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さくらいろ

11 薪売り

2021/03/02
忘れない忘れないから 6


「ごめん。」

俺はすぐに謝罪の言葉を告げる
かなり失礼な事を言ったから

「ううん。 俺の方こそごめん。」

それに対し、槙乃は怒りを見せるどころか逆に謝ってくる
ほんと、、こいつは争いを好まない
あんたが謝る必要なんて何もないのにさ

「いや、俺が出しゃばったから。」
「いや、俺が、、」
「いや、俺の方が、、」

槙乃も一歩も引かない
でも俺も引く訳にはいかない

だがそのやり取りがだんだん笑いに変わってくる

「くっくっ、、じゃ花沢類が悪いって事で!」
「くっくっ、、ん。 それで良い。 ホントにごめんな。」

「いや、悪気があって言ったんじゃないと分かっているから。 
でももしかして花沢類の時代は、望む相手と結婚できるのか?」
「ん。 ほとんどがそうかな? もちろん一部はそうじゃない人もいる。
仕事の関係上、親の決めた相手と結婚させられたりさ。」

そう告げながら視線を感じ横を向く
すると槙乃がジッと俺を見ている

「もしかして、その一部というのが花沢類か?」
「えっ? なんで?」
「やけに俺に晃司郎を勧めていたからさ。 羨ましいと思ったんだろ?」

槙乃に指摘され、自分の中に羨ましいという思いがあったことに気づく
だからもし槙乃も晃司郎に少しでも気があるなら、何とかしたかったのかもしれない
キューピットではないが、自分の代りに槙乃の不安を取り除き、恋愛を謳歌して欲しいと願ったのだろう

「その通りかもしれない。
俺の時代は自由に恋愛が出来る。
でも俺は、多分親が決めた相手と結婚する事になると思う。」

「どうして?」
「それは俺の家も晃司郎のような立場だからかな?」

言っておいて滅茶苦茶だなと思う
晃司郎と同じような立場なら、自由恋愛も無理と分かるのに、槙乃には可能性があるかのように話していたんだから

「じゃあ、親の決めた相手とは別に、好きな女性とか囲えば?」

あっ、この時代は何人もの女性を囲えるんだ
本妻とは別に妾とか
織田信長も妾が30人近くいたとか、、
他にもほとんどの武将は沢山の女性を囲っている

「俺の時代は一夫一妻制。 つまり一人の女性だけと結婚できるし、他の女性を囲うことは出来ない。」
「えっ! そうなんだ。 じゃあ、自由に恋愛が出来る人ってどんな人?」

「誰でもできるよ?」
「でも花沢類は出来ないんだろ? なんで?」

「親が自分の気に入る相手を連れて来るから。 それに逆らえない。」
「逆らったら手打ちにされるから? それとも拷問される? それとも村八分?」

手打ち=親の逆鱗に触れ刀で切られるって事だけど、まあ切られはしないが逆鱗には触れるかな?
村八分にもされない
ただ仕事がやりにくくなるだけか?

「手打ちにはされない。 でもかなり怒られる。」
「だったら自分の気持ちを言えば良いじゃないか! だって皆好きな人と結婚出来るんだろ?
手打ちにされないんだったらなんだってできるだろ?」

槙乃はやけに強い口調で告げて来る
でも確かにそうだ
逆鱗に触れようが嫌なら嫌といえる時代だ
仕事で支障をきたすなら、その会社に頼らなくてもいいような別会社を見つければ済む事だ
やり方はいろいろある
ただ、、今までそういう気持ちにならなかった
仕方ない、、と最初から諦めていた

「もしかして、、既に親が連れてきた相手と結婚しているのか?」
「いや、、まだ、、」

「じゃあ好きな女性は?」

脳裏にちらりと静の顔が浮かぶが、この気持ちが好きかどうかわからない

「以前、気になった女性はいたけど、それが好きと言う感情だったかどうかわからない。
俺が思う好きという感情は、もっとこう熱くなるというか、、離れていても忘れられないというか、、」

槙乃に話しながらも静に対しそういう気持ちが湧かなかったことに気づく
あったのは寂しいという感情だけだ
それもしばらくしたら無くなった

「分かる! 俺も好きと言う感情が良く分からないんだ。
ただ俺は自由に誰かと恋愛することは出来ない。
進ノ介が元気になっても俺は、、、」

適齢期を過ぎているからだろうか?
16歳で独身は遅い方だろう
普通なら誰かがうちの嫁にと申し出るはずだが、病弱という触れ込みが不味い

女性は子孫を残す義務や仕事や家事を背負わされるはずだ
それが病弱では話にならない
一日でも早く進ノ介の病が治り、槙乃と代わることが出来ればまだマシなんだが、、
それまで晃司郎が結婚を待ってくれれば、、

景色はいつの間にか賑わいを宿し、人の往来も増えてきた

「薪はいらないか? 薪はいらないか?」

槙乃は先ほどまでのボソボソとした小声とは打って変わり、大きな声で叫ぶように人々に向かって問いかける
すると店先に居た人、家の中に居た人、商売をしている人が声をかけてきた
へぇ、、こうやって売るのか、、

「薪をおくれ。」
「ありがと~。」

「進ノ介! うちにもおくれ!」
「ちょっと待ってて!」

進ノ介が背負っていた籠を下ろしている間も、相手の女性の視線を感じる
この場合、、どうすれば良いんだ?
普段の俺なら無視を決め込みそっぽを向くが、、それだと進ノ介の商売に水を差す

「進ノ介。 この人は?」
「あぁ、、、居候。 金目のものを取られていく当てがないから、暫く置いておくことにした。」
「そりゃまた。 しかし、、良い男だねぇ。」

俺は心底悩む
見てくれで判断されるのは一番嫌な事だ
だが、冷たい視線を送る事も、無視をすることも躊躇われる
今は手伝いの真っ最中
怖がられ薪が売れなくなるよりは、早々に売り切って早く帰りたい

「ありがとうございます。 またよろしくお願いします。」

思い悩んだ末、出来るだけ明るく挨拶を返した
きっと親友達が見たら、数歩後ずさりして一斉に声をあげるだろう
『何があったんだ!!』ってね

すると女性は一瞬惚けた顔をした後、、
「進ノ介! もう少し貰うわ!」
と更に買ってくれた

「ありがとう。」

進ノ介もホクホク顔だ
俺も嬉しい
早く売り切ることが出来そうだから

その後も同じようなやり取りが繰り返される
その為、いつもより早く完売となった
まだ村の真ん中あたりで、薪を求める人たちがいたのだがどうすることも出来ない

それにしても、、、
もしかして俺って商売の才能があるのかもしれない、、



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Comments 6

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2021/03/02 (Tue) 09:19

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2021/03/02 (Tue) 13:23

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2021/03/02 (Tue) 13:32
りおりお

りおりお

Re: ビオ~様

類君、槙乃ちゃんに話すことでいろいろ気づいたようですね
槙乃ちゃんの時代と違い、類君の時代は好きな人と結婚出来るんですよ
もちろん親が誰かを連れてくるかもしれませんが、流れに任す必要なんてないんですよね
それが分かっただけでもこの時代に来たかいがあったかな?
ただ帰る方法が分からないんですけどね

そしてこの時代では、自分が進んで手伝いをしている
この部分も進歩ですよねぇ

2021/03/02 (Tue) 14:31
りおりお

りおりお

Re: ゆきり~様

この時代と類君の時代では結婚に対する考えが違います
それにこの時代は一夫多妻制
本妻以外に沢山の女性を傍に置いていましたからね
もちろんそうすることが出来るのはお金持ちだけ
そして女性には選択権がありません
親としては、例え本妻でなくても、側近であってもお金持ちの家に嫁がせたいんですよね

2021/03/02 (Tue) 14:35
りおりお

りおりお

Re: シマエナ~様

類君の魅力は時代を超えても輝きを放っているんですよ
もちろん総ちゃんでも同じでしょうね

身長が高いし、体形もいいだろうし、カッコいいしね
確かに他の女性が「家においでよぉ」と言わなかっただけマシですね(笑)
私だったら言いそう(笑)

続きもお楽しみに

2021/03/02 (Tue) 14:39
りおりお
Admin: りおりお
こちらは二次小説『類つく』のお部屋となっております
そういった類の物が嫌いな方は、回れ右をしてご退場ください
ヤフーブログ『類❤だ~い好き』から引っ越して参りました
引き続き類君とつくしちゃんの幸せな姿をお届けできればと思っております
尚、ブロ友は現在受け付けておりません
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