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さくらいろ

13 諭す

2021/03/06
忘れない忘れないから 8


家の外壁には梯子が縄に括られ置かれていた
それを外しながら問う

「ノコギリとか斧もある?」
「昔はあったんだけど壊れてさ。」

という事はこの小さな鎌のみか
少し太い枝を落としても、斧がないと細く出来ないよな?
それもこの鎌でやるのか?
ノコギリや斧はいくらぐらいするんだろう?
いっそのこと、家の前の畑を耕し作物を育て自給自足した方が良いんじゃないだろうか?

類は家の前の畑を見る
半分ほどは何か植えられているが、残りは荒れ地になっている

「あそこも畑だろ? 耕して何か植えないの?」
「あぁ。 手が回らなくて。 春と秋は晃司郎の田んぼに行くだろ?」

確かに父親と病気の進ノ介が抜けた穴は大きい

「じゃ行こうぜ。」
「あぁ。」

俺は梯子を持ち歩き始める
すると母親が帰ってきたようだ
手には何か包みのようなものを持っている

「あらっ? 今日は早いのね。」
「花沢類のおかげで早々に薪が売れたから。 今から枝打ちに行ってくる。」

「そう。 頑張ってちょうだい。」
「それと味噌や赤米、野菜を買ってきた。」

「ありがとう。 イノシシ肉も手に入ったから。」
「、、、うん。 じゃ行ってくる。」

2人の会話から母親が手にしていた物はイノシシ肉だと分かった
村では出会わなかったし、どこかで即売会のような物でもあったのだろう
冷蔵庫がない時代だから生き物は保存がきかないからな

米と肉と野菜があれば少なくとも昨日よりはリッチな夕食になるだろう
これで少しでも進ノ介が良くなってくれれば、槙乃が少しでも楽になる
それにしても咳が続いているが夏風邪だろうか?
心配だ


山に到着後、早速梯子を立て昇ると手を伸ばし枝を切っていく
慣れない作業
その上、梯子の不安定さで上手く切れない
悪戦苦闘しながらも、その辺の木々を拾っている進ノ介に話しかける

「あのさ。 畑を耕そうか?」
「えっ?」

「薪を売るにしても簡単に切れる細い枝はもうほとんどないだろ?」
「うん。」

「それに少し高い枝は、こうして梯子を使わなければならないし、あんたには向かないと思う。」
「そんな事ない!」

槙乃は声を荒げる
男としてふるまい今まで頑張ってきたことが否定された気分なのだろう

「この作業は思ったより大変だと思う。 
俺の身長だから数段昇れば切れるけど、あんたの身長だともっと上に昇る必要がある。
そうすると梯子がもっと揺れ、さらに不安定になる。
その上、力が弱いだろうからなかなか切れない。
そうなると薪の量が減りお金にならない。」

俺は出来るだけ分かりやすく説明する
体格や体力の面でどうしても男性より女性の方が劣る
それはどうすることも出来ない事だと

「そんな事、分かっていたけど、、、
もともと父親が薪売りをやっていたし、進ノ介がそれを継ぐまで何とか続けたかったんだ。」
「ん。 分かってる。」

弟想いの槙乃の気持ちが良く分かる
あの事件で無傷だったのは自分一人
父親は殺され母親は犯され弟は心に傷を負い病に侵された
その懺悔の気持ちから自分を捨て弟になり切って約一年が経った
幾度となく男と女の違いに気づかされたことだろう
そのたびに女を捨て奮闘したんだろう

「畑も必死で耕しても日照りが続いて何度も作物を枯らしてさ。
今年もあまり雨が降らないんだ。
滝もかなり水の量が減っているし、家の裏の湧水もだんだんと少なくなってる。
畑に作物を植えるとなると必ず水は必要になるから難しいんだ。」

まだダムの無い時代で水の確保は至難の業だろう

「今飢えている作物は粟?」
「そう。 あれはどんなところでも育つから、、、って知らないのか?
もしかして花沢類の時代は粟を食べないのか?」
「うん。 ごめん。 米を食べてる。」

驚きの表情を見せる槙乃
俺はその表情に申し訳ない気持ちで一杯だった
この時代では貴重な米を、自分は平気で残していた
それどころかシェフが作った料理も一口食べ、好みでない味だった場合、平気で残していた

きっと槙乃から見たら、こっぴどく怒るところだろう
三食食べることもままならず、米は一度も口にしたことがないんだろうから



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Comments 8

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2021/03/06 (Sat) 09:38

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2021/03/06 (Sat) 10:17

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2021/03/06 (Sat) 10:19
りおりお

りおりお

Re: り~様

この時代の仕事は体力勝負
女性である槙乃にはかなり厳しい仕事
今なら電動のこぎりとかで、多少のハンデは克服できるかもしれませんけど昔は無理ですからね
その事を分かりやすく、そして決して槙乃の気持ちを踏みにじらないように説明しています

畑を耕すと類君が言いますけど、それも大変ですよね
鍬で少しずつですから、、

お米を食べるという類君
この時代に生きている槙乃には申し訳ない気持ちですね
食べ物のありがたみも良く分かってきたようです

2021/03/06 (Sat) 16:18
りおりお

りおりお

Re: ビオ~様

類君のアドバイス
槙乃も気づいていたでしょうけど、頑張ればなんとか、、という気持ちでやって来たのでしょう
でも大変なんですよね

そして食べ物の大切さも分かってきた類君
今まで平気で残してきたのにね
自分がどれだけ恵まれている時代で暮らしているのか良く分かったでしょうね

2021/03/06 (Sat) 16:20
りおりお

りおりお

Re: ゆきり~様

槙乃も、仕事の大変さ、そして女性としての力の無さは痛感している
でもどうすることも出来ない
とにかく進ノ介の病気が治るまでは何とか自分が、、という気持ちですね

それも類君は分かっているでしょうけど、今後の事を考えるとやはりアドバイスはしておきたいのでしょう
枝打ちは大変だから、それなら畑を耕した方が無難と考えたんでしょうね

そして類君の時代は米を主食としている
この事実を話すのは、かなり躊躇ったでしょうね

2021/03/06 (Sat) 16:22

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2021/03/06 (Sat) 19:43
りおりお

りおりお

Re: シマエナ~様

普通にお米が食べられる時代
食べ物は大切にしないとね

スーパーとかコンビニのお惣菜とかお弁当
時間が過ぎれば廃棄されるんだけど、あれも何とかならないものか?
別に数時間過ぎても普通に食べられるんですよね

2021/03/07 (Sun) 12:00
りおりお
Admin: りおりお
こちらは二次小説『類つく』のお部屋となっております
そういった類の物が嫌いな方は、回れ右をしてご退場ください
ヤフーブログ『類❤だ~い好き』から引っ越して参りました
引き続き類君とつくしちゃんの幸せな姿をお届けできればと思っております
尚、ブロ友は現在受け付けておりません
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