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さくらいろ

27 稲刈り

2021/04/03
忘れない忘れないから 4


少し落ち着いてきた槙乃が顔を上げると、はにかんだような笑顔を見せる
それは初めて見せる笑顔
本来の笑顔なんだろう

「ありがとう。」
「お礼を言いたいのは俺の方。
今こうして生きていられるのは槙乃のおかげだから。」
「ううん。」

槙乃は照れ隠しの為か下を向く

「これ、、」
「うん。 広げて見て?」

それは槙乃が手にしている手ぬぐい
あの時、槙乃に背を向け柄が見えないように注意して買った物
小さく折りたたんだ手ぬぐいを広げると、そこには両サイドに『つくし』が描かれている

「可愛い。」
「ん。 どことなくあんたに似てると思って。」

「つくしが?」
「そう。 シャンッと背筋を伸ばしまっすぐ立っている姿が。
どんなに踏みつけられようとも、自分を見失わずこうしてシャンッと伸びている姿が、、
あんたとよく似てる。
それに手ぬぐいは必需品だし、折りたたんでいれば今の格好でも十分身に着けられる。
だから進ノ介を演じている時も、槙乃の心は忘れるな!」
「うん。」

槙乃は丁寧にたたむと胸元へしまう

「じゃ家へ帰ろう?」
「うん。」

俺は手を差し出すと槙乃はハニカミながら俺の手を取った
その手は小さいながらも硬さが感じられる
この時代の女性が皆こういう手なのかもしれないが、きっと日頃の仕事のせいで特に掌が硬くなったのだろう

枝を切ったり、畑を耕したり、、
どれぐらいの豆を作り、どれだけ潰れただろう

これからはその労力を少しでも軽減させたい
ずっとインドア生活だったが、こうして体を動かす仕事も苦ではない
多分生きていく為と言う事の他に、傍に好きな人が居るから頑張れるんだろう

家に帰ると母親が畑仕事をしている

「ただいま。」
「ただいま戻りました。」

「お帰り。 売れた?」
「はい。」

至って普通の母娘の会話
それが先ほど見た光景や槙乃の過去話は幻なのでは?と思わせるほどだ

「二人とも手伝ってくれる? もう収穫しようと思うの。
米の収穫が始まったら、ここは放ったらかしになるから。」
「うん分かった。」

よく見ると一部穂が刈られている
槙乃から鎌を受け取ると、母親が声をかけて来る

「花沢類さんは初めてですよね?」
「はい。」

「じゃあ教えるわ。 この辺をもって、この辺を刈って、、」

母親は丁寧に教えてくれるが、あまりにも近いし確実に誘っていると分かる
なぜなら胸の谷間が見えるから
そういう服かもしれないが、、あまりにも露出が激しいように感じる

「分かりました。 じゃ俺は向こう側を刈ります。」
と早々に離れる

居候の身だし母親の心証を悪くし追い出されたくはない
とりあえず頼まれた仕事はきちんとこなすだけだ

穂を刈り取る作業を10分もすれば腰が痛くなる
中腰という体勢が悪いのだろうけど、どうすることも出来ない
三人がかりで半分ほど刈り取っただろうか?

単調な作業だがかなりしんどい
でも畑を広げないと4人分の食糧確保は難しいだろう

出来れば槙乃と二人で暮らしたいが、それはまだ先になる
家もなければ畑もない
何より病気の進ノ介が良くならなければ無理だ

その後、刈り取った穂を括り、逆さにして干していく

「今日はこれで終わり! 花沢類、疲れただろ? 休んでろよ!」
「ん。」

汗で体がべとべとする為、体を拭きたいが、その前に進ノ介の事が気になる
畑仕事をしている間も、進ノ介の咳が聞こえていた

早朝少し散歩したが、その所為で体調が悪化したのでは?と思うと気が気ではない
確かに心理的に病んでいる部分もあるが、それと咳とは別問題だ
もしかして喘息だろうか?
と思いながら家の中に入る

すると隅の方で横たわり、体を丸め咳き込んでいる進ノ介

「大丈夫?」

声をかけ進ノ介に近づきながら、頭の中で喘息の対処法を必死に考えるが全く分からない

「進ノ介。 大丈夫か?」

進ノ介の傍に腰を下ろし、背中を摩りながら声をかける
俺の声に気づいた進ノ介が顔を上げたが、それを見た俺は驚き固まる

進ノ介は口元を手で覆っていたが、その手の隙間から血が流れていたから



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Comments 4

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2021/04/03 (Sat) 09:52

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2021/04/03 (Sat) 15:01
りおりお

りおりお

Re: ビオ~様

類君、やったことの無い稲刈りを、、
ここに残ると決めた以上、こういうことをこれからもしていく必要があるし、一から覚えないとね
機械が無いからこうして手作業です
腰が痛いでしょうね

そうしている間も、進ノ介の事が気になっていた類君
一段落した後すぐに進ノ介の傍に行ったんですけど、、
血を吐いている進ノ介
どうしてでしょう?

ビオ~様、鋭いです!!

2021/04/03 (Sat) 17:51
りおりお

りおりお

Re: ゆきり~様

進ノ介の体調が気になる類君
確かに早朝散歩させましたからね
これが原因で病状が悪化していたらと思うと気が気ではなかったんでしょう

でも、、進ノ介は咳と共に血を吐いている
これって普通の喘息とは違うような?

まだまだ一段落とはいかないようですね
類君の頭の中には、進ノ介が元気になれば槙乃ちゃんと二人で暮らしたいという夢が出来ているのにね

2021/04/03 (Sat) 17:53
りおりお
Admin: りおりお
こちらは二次小説『類つく』のお部屋となっております
そういった類の物が嫌いな方は、回れ右をしてご退場ください
ヤフーブログ『類❤だ~い好き』から引っ越して参りました
引き続き類君とつくしちゃんの幸せな姿をお届けできればと思っております
尚、ブロ友は現在受け付けておりません
忘れない忘れないから