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さくらいろ

28 結核

2021/04/05
忘れない忘れないから 4


進ノ介の口元を覆う手の隙間から血が流れ出ている
それはかなりの量だと分かる

そしてこれは単なる病気ではないと瞬時に理解した
浅い知識しかないが、これは結核なんじゃ?

すると槙乃が来て俺を押しのける

「大丈夫?」
「姉ちゃん、、、」

「すぐ薬を飲んで。」
「うん。」

進ノ介は槙乃の手から手ぬぐいを受け取ると、口元と手に着いた血を拭い薬を飲む
驚くことなく淡々と労わっている事から、吐血は初めてではないと分かる

「どう? 楽になった?」
「うん。 それより、、」

進ノ介は俺の方を見る
先程思わず『進ノ介』と口走ってしまったためだろう

「花沢類には話したから。 その上で、進ノ介が良くなるまであたしと一緒に働いてくれるって。」

進ノ介は俺と槙乃を交互に見る
そして俺に向かって、、
「ありがとう。」
と呟いた

俺の気持ちを理解したのか、、
それとも単に俺が槙乃の手伝いをするからなのか、、
進ノ介の『ありがとう』の言葉に重みを感じた

「いや、、それより落ち着いた?」
「うん。」

進ノ介に本当の事は言えない
だから敢えて優しく声をかける
でも心境はかなりドキドキしている

「良かった。 じゃ食事まで休んでいた方が良い。」
「うん。」

進ノ介が横になり、槙乃が汚れた手ぬぐいを持ち立ち上がったのを見て、俺も続く
思った通り槙乃は手ぬぐいを洗う為桶を持ち、水がめへ向かった

「槙乃! ちょっと!」

家から離れた頃合いを見計らって声を出す
とてもじゃないが進ノ介の前で話せないと思ったから

「何?」

槙乃は振り返る事なく声を発する
その声色はそっけない
何も聞くな!と匂わすものだ

だがそうも言っていられない

「槙乃! ちょっと聞いて! 進ノ介の病気は心理性の物じゃない。
いやそれもあるけど、あの咳は結核だ。 あれは移るんだ!」

俺の言葉を無視し、立ち止まる事も反論する事もなく水汲み場へ来た槙乃は、桶に水を入れるとその中で手拭いを洗い始める
その手を掴み、作業を止める

きちんと伝えたい
諭したい
そして出来るだけ早く進ノ介を隔離させたい

「槙乃! よく聞いて! 結核というのは空気や飛沫で感染する。
だから早く進ノ介を他の所へ移すか、あんたが別の所で暮らした方が良い。
でないと、あんたまで病気になる! 分かるだろ?」

結核は、かなりの確率で死に至る病気だ
だからできるだけ早く遠ざけたい

「分からない! 分かりたくもない! あたしにとってたった一人の弟なんだ!
隔離? 別の場所? じゃあ誰が進ノ介の世話をする?」
「それは、、」

俺は口籠る
確かに病人である進ノ介をどこで隔離する?
別の場所で思い浮かぶのは水がめを拝借した空き家だが、かなり荒れていた
手直しが必要だ
じゃあその為のお金は?

それにこことあの空き家は離れている
俺が進ノ介の世話をし空き家で寝泊まりしたとしても、ここに女性二人を残すのは危険だ

「やっぱり花沢類はここを出て行った方が良い。
進ノ介は質の悪い風邪だ。 俺も寒くなると良く咳や熱が出る。
咳き込み始めると止まらなくなったこともある。
流行り病だと不安をあおるなら出ていけ!」

「信じたくない気持ちも分かるけど、何か方法を考えよう? なっ、槙乃?」

すると槙乃は俺の方を向く
その瞳には涙が溜まりぽろっとこぼれ落ちる
その表情から、進ノ介の病気が単なる風邪ではないと思いつつも、単なる風邪であることを願っていることが分かる
そしてその不安が大きく膨らんでいた事も
たった一人の身内が心の支えで生きる糧だった槙乃にとって、そう願わずにいられなかったことも

俺は槙乃を抱きしめる
俺の発言で好きな女を泣かせたという何とも言えない心のモヤモヤ
それと同時に早く不安を解消させたいと言う思いから

「あんたを不安にさせてごめん。
槙乃にとって進ノ介が大切という気持ちと同じように、俺にとってあんたが大切なんだ。
あんたまで病気になって欲しくないんだ。」

ごめん
槙乃の心の支えを粉々にする言葉を吐いてしまった
ほんとにごめん

あんたがどれほど進ノ介を大切にしていた事か、、
その進ノ介の異変に気付かないあんたではないことぐらい分かっていたのに、、
ごめん、、

「俺の方こそごめん。 進ノ介の病状を詳しく話さなかった俺が悪い。
流行り病なんだったら花沢類に移してしまう。
だから早く出ていけ!」

こういう奴なんだ
なんであんたが謝る?
なんで俺の体を気遣う?
そんなあんただから、、いつの間にか俺は惹かれたんだ

人は支え合い思い合いながら生きる事
愛する人を守るために行動する事
そうすればたとえ貧しく辛い日々でも、そこに笑顔が生まれ幸せを感じられる
それら全てを槙乃から教わった
欠落していた他人とのかかわりの大切さを知った今、俺は槙乃を守り大切にしたいと強く思う

以前のように他人から手を差し伸べられるのではなく、、
自らの手を差し伸べる俺でありたい




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Comments 4

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2021/04/05 (Mon) 09:56

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2021/04/05 (Mon) 11:25
りおりお

りおりお

Re: ビオ~様

槙乃ちゃんも、進ノ介の病気が普通じゃないことは分かっていた
でもただの風邪と思いたかった
心因性の所為だと思いたかった
そう思うことで何とか頑張ってこられた
たった一人の肉親ですからね
何があっても守りたくなりますよね

類君もどうしていいのか分からないですね
槙乃ちゃんの体を思えばすぐにでも進ノ介と離したい
でもその場所がない
お金もないですしね

槙乃ちゃんの気持ちも大切にしたいし、体も大切にしたい
どうするんでしょうね

2021/04/05 (Mon) 13:27
りおりお

りおりお

Re: ゆきり~様

類君も悩みますね

槙乃ちゃんの体の事を思えばすぐにでも進ノ介を隔離したい
でもその場所がない
たった一人の肉親だし何とかしてあげたい
でもどうすれば良いのか?

槙乃ちゃんも認めたくない事実ですよね
だから単なる風邪だと思いたかったし、心因性の物で体調が悪いと思いたかった
いつかは必ず治る!!
そう思うことで今まで頑張ってこれたんですから

結核はこの時代大変な病気です
薬もないですからね
どうしたら良いのでしょうか?

2021/04/05 (Mon) 13:31
りおりお
Admin: りおりお
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