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さくらいろ

29 夜空

2021/04/07
忘れない忘れないから 4


「俺がもっと早く進ノ介の病状に気づいていたら、、、もっと早く何か対処できたのかもしれない。
ただ俺は医者じゃないし、病名は知っていても詳しい治療法は分からない。 ごめんな。
それと俺は結核にはかからない。 
BCGという予防接種、、つまり結核にならない薬を体の中に入れているから。
だから俺の心配はいらない。 ごめん、、俺ばかり守られてる。」

槙乃はゆっくり顔を上げる

「その薬はいつできる? 一か月後? 一年後?
それまで頑張れば進ノ介は元気になれる?」

藁をもすがるような瞳で見つめられると辛い

「ごめん。 まだまだ先。 350年ぐらいは先だと思う。」
「、、、、そっか、、、」

俺たちの時代では結核は治る病気だし、予防することも出来る
だがこの時代はまだ蔓延期だろう
原因が分かるのもまだまだ先
槙乃の気持ちを思うとかける言葉も見つからないが、それでも俺の気持ちは槙乃には結核にかかって欲しくない!!

「でもさ。 槙乃が進ノ介と同じ病気になったら進ノ介も悲しむ。
進ノ介の病気が治った時、あんたが床に臥せっていたら進ノ介も自分を責める。」

敢えて『進ノ介』という言い方にすることで『俺も』同じ気持ちだと知ってもらいたい

「だから、、進ノ介の世話をするときは十分に気を付けて欲しい。
本当は、家の中を仕切りたいけど、大工を呼ぶのも嫌なんだろ?」
「うん。」

村の人に疫病人がいると知られたら、確かにマズイかもしれない
誰も薪を買ってくれないだろうし、野菜とかも売ってくれないだろう
最悪、村八分にされるかもしれない

「だったら出来るだけ窓や入り口を開け、中の空気を入れ替えた方が良い。
それと食器は分ける事。 もちろん洗濯も分けた方が良い。」
「うん。」

「それと出来るだけ俺が介助する。
あんたが進ノ介を大切に思うように、俺もあんたが大切だから。」
「うん。 ありがと。」

俺は足元に生えている細い雑草の葉を抜き取ると、槙乃の左手を取る

「あんたは、まだ俺の事が信じられないと思う。
他の男のように、そのうちいろんな女と遊ぶようになると言う思いがあるだろ?
でもその心配はいらない。」

俺は、槙乃の薬指に細長い葉を巻き付け結ぶ

「俺の時代には結婚指輪という物があり、相手を敬い、一生愛し、添い遂げることを神仏に誓うんだ。
その時、指輪という金属で出来た輪っかを互いに贈りあう。
あなたは私の物って事でさ。
この時代、まだそういう風習はないけど、、俺は、あんたを守り助け愛することを誓う。」

俺はもう一本葉っぱを取ると、それを槙乃に渡し左手を目の前に差し出す

「あんたも俺を縛ると良い。 
この時代の女性は、、と悲観する必要はない。
時代が違うからとか、いつか俺が元の時代に戻るかも?とか思わなくていい。
俺は槙乃が望む限りここにいるし、あんたを幸せにしたい。
進ノ介の事も今後の事も、二人で乗り越えていこう?
あんたの不安や悩みも、俺に半分分けてよ?
一人じゃ無理でも二人なら頑張れるだろ?
だから、、、俺を縛れ!!

槙乃は手にしている葉っぱで俺の左手薬指を縛り始める
その指先は震えている

「俺が花沢類を縛ったら、、元の時代に戻れなくなるかもよ?」
「それでも良い。 俺ってさ、、なんも出来ない、、いや何もしない男だったんだ。
でもここに来て、生きていく為には働く事が大切で、愛しい人と一緒なら頑張れることを知ったし、、
そんな自分が嬉しくて仕方ないんだ。
だから俺と一緒に生きていこうな?」
「、、、、うん。」

何とか槙乃の返事がもらえホッとする
少し強引過ぎた気もするが、それでもこうして互いを縛りあうことで一人じゃないと分かってもらいたい

「その手ぬぐいは、進ノ介専用にした方が良い。」
「うん。 分かった。」

本当なら捨てたいところだが、替えは限られている
それなら進ノ介専用として使用する方法をとるしかない


この日の夕食は小魚の日干しのようなものがあった
かなり塩味が強いが、塩分補給には丁度良い
その小魚を頭から全て食べほした

一日二食だし、日中は体力仕事
食べられるものは何でも口に入れたくなる
ほんと、、昔の自分がどれだけ我儘だったのか良く分かった



この夜、、
進ノ介が咳をするたびに小窓を開け空気をれ替える

「ごめん。 俺がやるから花沢類は少し休めよ。」
「いや。 それより少しだけ外に出てみない?」

「外?」
「そっ!」

小窓から周りをチェックし、怪しい人や動物がいないことを確認し、そっと家の外に出る
こうして夜中に外に出るのは初めてだ
槙乃も素直について来てくれるが、かなり怖がっているのが分かる
その為、家から一歩出たところで立ち止まる

「何?」
「ん。 すごく綺麗だな、、と思ってさ。」

そこには満天の星が夜空一面に広がっている

「こんな夜空、初めて見た。
あんたにとっては当たり前の景色かも知れないけど、俺の時代には見られないから。」
「そうなの?」

「うん。 無い物ねだりじゃないけど、この景色は誇っていい景色だと思う。」
「誇るって、、、大袈裟な、、、」

クスクス笑いながら空を見上げる
こんなに沢山の星が見える時代
俺の時代は平和かもしれないけれど、、それでも沢山の物を失くした上で成り立っている
この時代は、、これからたくさんの事を経験する時代だけど、、
それでもこの空のように、何時までも槙乃には輝いていて欲しい

俺は空を見上げる槙乃の唇に、そっと掠めるようなキスをする
あまりにも綺麗で、、
愛しくて、、
ドキドキして、、
触れたかったから、、

「また一緒に夜空を見ような?」
「、、、、うん。」

俯きその表情は見れなかったが、しっかりと気持ちは通じ合っていると確信した夜だった



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Comments 4

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2021/04/07 (Wed) 10:34

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2021/04/07 (Wed) 11:30
りおりお

りおりお

Re: ビオ~様

指輪の代りに葉っぱの交換をしました
こんな儀式など全く知らない槙乃ちゃん
それに類君を縛る事に躊躇いもあった
それでも類君の言葉にしっかりと結びました
類君も男らしくなりましたね

そして夜のキス
星空の下で交わしたキスは、槙乃ちゃんにとって不意打ちのような物
でもきっと心は伝わったでしょう

2021/04/07 (Wed) 14:34
りおりお

りおりお

Re: ゆきり~様

類君、カッコいいですよねぇ
本気で好きになったからここまで男らしくなったんでしょう
それにこの時代、今までの自分じゃいられません
率先して力仕事をしないと、好きな人と暮らせないですからね
畑違いの仕事となりますが、それでも好きな人と暮らせる喜びの方が大きいようです

そして葉っぱの誓い
これで心が結びついたかな?
しっかりと互いを縛りましたからね
だからその日の夜のキスへと繋がるんでしょうね

銀世界の中で交わすキス
槙乃ちゃんにとっても忘れられないキスとなった事でしょう

2021/04/07 (Wed) 14:37
りおりお
Admin: りおりお
こちらは二次小説『類つく』のお部屋となっております
そういった類の物が嫌いな方は、回れ右をしてご退場ください
ヤフーブログ『類❤だ~い好き』から引っ越して参りました
引き続き類君とつくしちゃんの幸せな姿をお届けできればと思っております
尚、ブロ友は現在受け付けておりません
忘れない忘れないから