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さくらいろ

47

2023/09/24
運命の恋なんて信じない<完> 8


西田は時間になっても降りてこない司にしびれを切らし、何度も電話をかけるが出てこない。
心配になり直接部屋へと向かった。
そして合鍵を使って部屋へ入る。
すると部屋が凄い惨状になっていた。
モーニングは手を付けられず全て床に転がっているし、ソファーは蹴り飛ばしたのか見るも無残に転り、ガラスのテーブルは粉々に砕けている。
明らかに司が暴れたと分かるが、こういう風景は高校以来だ。

その汚れた床に司がボーと座っている。
しかも口元は切れている。

「司様? 何があったのですか?」

西田の声に司はゆっくり振り返る。

「ここに牧野が来た。 お前は牧野がNYに居た事を知っていたか?」
「牧野様が? いえ、存じません。」

西田も初耳だ。
だがすぐにこうなった現状を理解した。

「とにかく本日は抜けられない会議があります。 詳しくは私が調べておきますので、仕事へ行きましょう。」
「仕事? んなの、もうどうでもいい。」
「そう言う訳には行きません。 とにかく私がきちんと調べておきますので。」

西田はクローゼットからカッターシャツとスーツを取り出すと司の元へ持っていく。
もちろん内心、身から出た錆と思っている。
だが、それを言う訳にはいかない。

司は西田をジッと見る。
確かに知らなかったようだ。
知っているならババァに確認を取ると言うはず。
なぜなら牧野は一か月前からここで働いていたと言っていた。
でも西田はババァに確認するとは言わねぇ。
という事は単に俺に会いに来たとしか思っていねぇ。

あいつがメープルに就職が決まったことは知っていた。
夏休みに研修がある事も聞いていた。
だがNYメープルだとは思わなかった。
メープルはババァの管轄。
という事はババァが仕組んだことか?

「ここに牧野様が来られたという事は、まだNYに居るはずです。 
必ず探しもう一度司様とお話されるよう伝えますので。 
その為にも、司様はきちんと仕事をされてください。 
社長も牧野様との結婚を認めておられます。 
それは司様がきちんと仕事をされているからです。 
万が一、仕事をさぼるようなことがあれば二度とお二人の未来はないと思われます。」

西田の言葉に白々しさは感じられねぇ。
司はゆっくり立ち上がると急いで着替え始めた。

――だったら直接ババァに聞くまでだ!

「行くぞ。」

急に仕事に行くと言い出した司に呆れるばかりの西田だが、つくしとの結婚がこうして司を動かしていると思うと、何とか元のさやに戻って欲しいと願わずにはいられない。

二人はすぐにメープルを後にし会社へと向かった。



つくしはジョディと掃除をしていた。
何とか涙は止まったものの、気を抜けばまた涙があふれ出る。
それに目は真っ赤だ。

『つくし。 目が赤いけど何かあったのかい?』
『えっと。 今日で仕事が終わりなので寂しいなと思って。』

つくしは何とか誤魔化す。

『かわいいこと言ってくれるねぇ。 でも半年後にまた会えるだろ?』

もうメープルに就職は出来ない。
でもそれを伝えられない。
理由を聞かれたら答えられないからだ。

『そうですね。』
『今度はどこか遊びに行こうか? 
それまでに行きたい場所があれば調べておくと良い。 案内してあげるから。』
『はい。』

メープルの従業員は皆良い人達ばかりだ。
丁寧に教えてくれるし、ミスしてもカバーし合う。
ここに勤めることが出来たら人間関係で揉める事はまず無いと言っていい職場だったな、、、と、つくしの中ではすでに過去形になっている。 

『あっ、副社長の部屋の掃除が入ってるよ。 また大変なんだろうねぇ。』
『どうでしょうね。』

つくしは現状を知っている。
だが言えない。
そして出来れば二度と足を踏み入れたくない場所だ。
だが仕事だしそうも言っていられない。

ジョディと共に部屋に向かうと、そこは今朝見た部屋とはまるで違っていた。

『これはまた、、、』

ジョディも言葉にならないようだ。
つくしもあまりの惨状に、司が暴れたと直ぐに分かる。

『これはちょっと、私たちの管轄外だね。 支配人に話を付けるよ。』

ジョディはすぐに支配人に連絡を取り状況説明を始めた。
その間、つくしは片付けられるものを片付ける。
倒れたワゴンの上に、床に落ちている皿や料理を乗せていく。
割れたガラスは危ない為そのままにし、先にバスルームへ。
そこには使い捨てられた避妊具が隅の方に転がっていた。

前回と違い、二人の絡み合う様子がリアルに想像できることが辛い。
それでもバスルームの掃除を始めた。

そこに支配人がやって来た。

『つくし。 この部屋はもう良い。 家具やじゅうたんを一式取り替えるそうだ。 
その時、専門業者に入ってもらうから全て掃除してもらう。』
『分かりました。』

つくしは残りの時間、他の部屋を一心不乱に掃除する。
少しでも体を動かしていないといろいろ考えてしまうからだ。
そしてもしフロント係だったら仕事にならなかっただろうな、、、と思った。



司は会社に着くとすぐに社長室へ向かった。
そして乱暴にドアを開けるとパソコンに目を通していた楓が睨む。

「何ですか? 乱暴にドアを開けて。」
「ババァ。 牧野がメープルで働いていた事をなぜ黙っていた。」

「牧野さんは研修で来ているんです。 
あなたに教えるとまともに研修が出来ないと思いました。
違いますか? ですがそれは私の気持ちです。 
もちろん司さんには連絡を取るなとは一言も言っていません。 
司さんに対しても同じです。 研修中だから連絡を取るなとは言っていません。
私が直接伝えなくても二人がきちんと連絡を取り合っていれば直ぐに分かった事ではないですか?
何故司さんは牧野さんに連絡を取らなかったのですか? 
メープルで研修があると知っていたのでしょう?」

司は何も言えない。
連絡を怠ったのは確かに自分自身だ。
もし来ていると知ったら自分の都合に合わせただろう。
だから牧野も俺に黙っていたと分かる。

「でも教えてくれれば、、、牧野に、、、知られずに済んだんだよ。」
「知られる? 滋さんとの関係ですか? 
知られると困る事をしていたんですか? 牧野さんに隠していたんですか?」

「それは、、、。」
「私はあなたと牧野さんの結婚を認めています。 それは今も変わりません。 
ですがあなたが滋さんを選ぶのならそれでも構いません。 
ただ、、、結婚後に揉めることだけは回避して欲しいと思っています。 イメージダウンになりますから。」

「俺と滋は割り切った関係で、滋もそのつもりだ。 もちろんそれも牧野との遠距離が終わるまでだ。」
「ホントにそう考えているんですか? だとしたらバカとしか言いようがありませんね。」

「バカ?」
「えぇ。 相手は大河原財閥の一人娘です。 
その女性と四年近くも関係を持って大河原社長が黙っていると思いますか? 
あちらは既に滋さんとあなたが付き合っていると思っていますよ。」

「えっ! でも滋は上手く誤魔化していると、、、。」
「ほんと、、バカですね。 彼女にはボディガードがついていますし専属運転手もいます。 
滋さんが誤魔化したところで周囲から社長の耳に届きますよ。 
しかも何度も一夜を共にしているんですから恋人と思っていても不思議ではないでしょう? 
だから今も大河原社長は無言を貫いています。 
万が一のことがあっても結婚すれば済む話ですからね。」

楓の辛辣な言葉に、司は改めて自分の行動が浅はかだったと気づく。

「バレなければという甘い感覚で牧野さんを騙した罪は重いです。 
もちろん普通の女性なら許してくれるでしょう。 
なぜなら道明寺と言うブランドを手に入れ悠々自適の生活が送れるのですからね。 
ですが彼女はどうでしょう? 
あなただけを信じ、あなたを支えようと努力してきた姿を私は知っています。 
寝る間も惜しんで必死に課題を熟し大学も優秀な成績を残し、並大抵の努力では無かったはず。 
その間、あなたは何をしていましたか? 滋さんに逃げていましたよね?」

司は言い返す言葉が見つからない。

「でももう一度きちんと話がしてぇんだよ。 あいつの住んでいる場所を教えろよ。」
「牧野さんが暮らしている場所をあなたに教える事は出来ません。 
何をするか分かりませんからね。 
ただ、、牧野さんは明後日11時の飛行機で日本へ帰ります。 
それまでに仕事を片付け時間を作る事が出来れば、、、私は何も言いません。」

明後日帰る!
明後日ならもう一度牧野と話が出来る!

司はダッシュで楓の部屋を後にする。
その行動を見て、楓はふ~と大きく息を吐く。

今更追いかけたところで彼女の気持ちが変わるとは思えません。
彼女の怒りは司の顔に現れていましたから。
そして明日、、、私にも決断が下されるのでしょう。
メープルの従業員が絶賛する彼女を手放すのは大変惜しいのですが仕方のない事です。
彼女はメープルで働きたいのではなく、司の傍に居たかっただけなのですから。




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2023/09/24 (Sun) 09:32

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2023/09/24 (Sun) 10:14

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2023/09/24 (Sun) 10:26

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2023/09/24 (Sun) 10:51
りおりお

りおりお

Re: ちんちく~様

つくしちゃん辛いですけど最後まで仕事をしています。
急遽、掃除部門へ変えていて良かったですね。
黙々と仕事をすればよいですから。

そして司君。
やっと自分の行動を振り返ることが出来たでしょうか?
でも今更ですよね。
バレなければ良いと思っての行動でしたから。

楓さんから言われた通りです。
もっと密に連絡を取っていれば、つくしちゃんがNYのメープルに居た事も分かった。
何もかも自分が蒔いた種ですね。
でもまだあきらめていない様子。
どうするかな?

2023/09/24 (Sun) 13:34
りおりお

りおりお

Re: みわ~様

司くん、自分の問った行動がどれほどバカで浅はかだったか気づいたでしょうか?
つくしちゃんに言い訳をしたのも、ほんとバカみたいな戯言ですよね。
その場を乗り切れば誤魔化せると思っているのがまるわかり。

そしてつくしちゃんとの別れが信じられず、直接楓さんの元へ。
でも楓さんに文句を言っても仕方ない事なんです。
どうしてつくしちゃんと密に連絡を取らなかったのか?
そうしていればつくしちゃんがNYメープルに来ている事も分かったし、もちろんつくしちゃんがメープルの仮眠室に泊まっていた事も分かった。
それこそ幾らでも恋人としての時間を持つことだってできたのに、何も知らなかったから滋さんとの関係を続けてしまった。
そこにはつくしちゃんよりも滋さんの方が大切とも取れますね。
そしてまだあきらめていない様子。
もう一度きちんと話し合いをすれば元のさやに戻れると思っているみたいです。

一方の楓さんは司君の顔を見て、もう二人が元のさやに戻る事は無いと感じています。
道明寺という会社に魅力を感じているのではなく、司くんの隣に居たいという純粋な気持ちだけで動いていた事を知っているから。
楓さんは明日つくしちゃんと話を持つことになっていますが、それを司くんには告げませんでした。
まずはつくしちゃんの気持ちをキチンと聞き、そして尊重したいからでしょうね。
今の司君は邪魔でしかありませんから。

次回もお楽しみに。

2023/09/24 (Sun) 13:39
りおりお

りおりお

Re: Chawa~様

当然こうなりました。
司くんは自業自得。
バレなければ良いという考えは裏切り行為ですよね。
それすらも気づかず、しかも現場に乗り込まれて平気で嘘をつきました。
そんな司君をこれから信じられる訳がない。
でもまだ話し合いを持てば何とかなると思っている様子。
諦めが悪いですよね。

そして楓さんは司君の顔を見てつくしちゃんの気持ちを察しました。
もちろんこうなる事を予測していたでしょう。
だからこそNYメープルで研修をさせたんでしょうね。
自分の目で見て感じて、そして結果を出しなさいという事をね。
それだけ楓さんはつくしちゃんを買っていた証拠です。

あらかじめ予定されていたつくしちゃんとの対面はどうなるんでしょう?
つくしちゃんは既にメープルを辞退する気持ちのようですけどね。

2023/09/24 (Sun) 13:43
りおりお

りおりお

Re: ゆきり~様

司くん、呆然自失。
今頃、ことの重大さに気づいても遅いんですよね。
しかも4年近く騙してきたんですから。
それでも話をすれば分かってくれると思っているのか、もう一度つくしちゃんと会う気持ちを固めたようです。

一方の楓さんは既に終わったと思っているでしょう。
先行投資としてつくしちゃんを虐めるかのような課題を与えても、司くんの隣に立つ夢を持ちそれに応えてきました。
それは楓さんの想像以上の物で、いつしか認めていたんでしょうね。
だからこそこの結果を残念がっています。
ほんと、、、司くんはバカですね。

2023/09/24 (Sun) 13:49
りおりお
Admin: りおりお
こちらは二次小説『類つく』のお部屋となっております
そういった類の物が嫌いな方は、回れ右をしてご退場ください
ヤフーブログ『類❤だ~い好き』から引っ越して参りました
引き続き類君とつくしちゃんの幸せな姿をお届けできればと思っております
尚、ブロ友は現在受け付けておりません
運命の恋なんて信じない<完>