FC2ブログ

Welcome to my blog

涙色の恋の花<完>

2 十字架

12

小学生以下の子供達は、消灯時間になり、寝る準備を始める
つくしも、職員に連れられ歯磨きをし、亜門の部屋へ連れて行かれた

そこには既に亜門がおり、二段ベッドの上へ、自分の荷物を移動させ、下段をつくしの為に空けている

施「亜門、、ありがとう」

職員は、亜門にお礼を述べ、直ぐにつくしの目線に屈みこむ

施「つくしちゃん。 今日から、亜門お兄ちゃんと同じ部屋だよ」

つくしは、先生の横に立つ亜門を見上げる
先生が笑顔なのに対し、亜門は笑顔の一つも見せず、じろりとつくしを睨むように見ている
その視線に、つくしは数歩後ずさる

施「こらっ、亜門! 睨まないの!」
亜「睨んでなんかないし、、これが普通の顔だ!」

亜門は、この施設に来て笑顔を見せた事は無い
もちろん、この施設にくると言う事は、何らかの傷を負い、自分を表現できない事だと職員は判るのだが、つくしには判らない

施「つくしちゃん、、恐がらなくて大丈夫。 
  亜門お兄ちゃんは、こういう顔だけど、恐い人じゃないからね」

亜門は、酷い言い方だ、、と思う物の、小さい子供に分かり易く伝えるには、こういう言い方以外にない事ぐらい分かる為、特に反論をしない

施「ここが、つくしちゃんのベッド、、一人で寝られる?
  寝るまで一緒に居ようか?」

つくしは、コクンと頷く
先生は、つくしをベッドに誘い、布団をかけてやる
そしてつくしが寝付くまで、優しくリズムを刻んだ

そのつくしが寝たのを確認し、、
施「何かあれば、呼んでね」
と亜門に声をかけて出ていった

亜門は、勉強の手を止め、そっとつくしの寝顔を覗き込む
頬には青あざがあり、こんな小さな子供に、、と思うとやるせなくなる

ここでの生活は、平穏に暮らせるが、小学校へ行くと、どうしても疎外感を感じる
職員の愛情は受けられるが、それは期限付きで、仕事の一貫としての物
真の愛情は、一切受ける事が出来ない
それでも、暴力が無いだけマシだし、キチンと食事が与えられる

ただ、心無い言葉と蔑んだ視線は、何時までも付き纏う
それらを見返す為にも、亜門は勉強を頑張っている

亜門は、再び勉強を再開し、12時近くまで行った後、そろそろ寝ようか、、と椅子から立ち上がった

すると、つくしが魘されている事に気が付く

つ「いたい、、いたい、、、」

亜門は、虐待の夢でも見ているのか?と思い、つくしを安心させるように優しく手を握る

亜「大丈夫。 ここに恐い人はいないから」
つ「いたい、、たすけて、、」

亜「大丈夫、、大丈夫、、」

つくしの額に玉のような汗が噴き出ており、それをそっと拭ってやると、ビクッとつくしが目を開けた

亜「恐い夢でも見た? でももう大丈夫。 
  ここには恐い人はいないから、ゆっくり眠ると良い」

亜門の言葉に安心したのか、つくしの大きな瞳からポロリと涙がこぼれ落ちる
そして、亜門の手を、小さな手でギュッと握る

亜「参ったな、、」

亜門としても、こういう経験は初めてだ
どちらかと言うと、威圧感から年下の子供には懐かれたためしがない
だから、何時も一人だった

その為、こうして小さな手でギュッと握られ、縋るような瞳で見つめられるのは初めてで戸惑う
だが、直ぐに庇護欲に似た感情が湧きあがる

亜「分かる? ここには恐い人はいないし、つくしを叩いたりする人はいない」
つ「うん」

亜「じゃ、もう寝な!」
そう告げ、つくしの額の汗を拭う

顔にこれだけの汗を搔いていると言う事は、体にもかなり掻いているのでは?
これだと風邪を引くか?と、思い、、
亜門は、ハンドタオルを手に取る

亜「ちょっと起きてごらん。 身体も汗を搔いているんじゃない?
  汗を拭けば、少しはマシだと思うから。 バンザイ出来る?」

言われた通り、つくしは起き上がる
そしてバンザイをした

亜門は、サッと上着を脱がせ、汗を拭いていく
思った通り、体にも青痣が見られる

亜「後ろ向いて?」

その言葉に、つくしは後ろを向いた
長い黒髪が腰まで覆っている為、その髪を前に流すと、、
亜門の身体がビクッと震える

それは、小さな背中一面に、茶色いやけどのような跡、、
しかも、どう見ても熱せられた物で、押し付けられた物だと判る

どれだけつくしの事が憎かったのか分らないが、これから一生この傷を背負って生きていくのかと思うと、哀れでならない

亜門は、何も気づかないフリをし、背中の汗を拭い、服を着せる

亜「さっ、、寝ようか?」
つ「うん」

亜「一人で寝られる? つくしが眠るまで、一緒に居ようか?」

亜門は、自分の言葉に驚く
自分で言うのも何だが、人を気遣う様なタイプでは無い
だが、、どうしても放っておけない、と言う感情が湧く
つくしには、優しく接してやりたい、、と言う感情が、、

つ「うん」
亜「分かった」

亜門は、つくしと共に布団に潜り込む
そして、つくしの小さな手を握った

亜「もう恐くないだろ?」
つ「うん」

つくしは、ゆっくり目を閉じる
そのつくしが、これ以上恐がることが無い様、電気を消さず、亜門もそのまま眠りについた



翌日、、
亜門は学校から帰ってくるなり、直ぐに先生を問い詰める

亜「先生! つくしの背中! あれも親の仕業?」

職員は、亜門の問いに驚く

施「亜門? 見たの?」
亜「見たと言うか、、まあ結果的に見たんだけど、、あれは無いだろ?
  あんな十字架を、一生背負うなんて、、女の子なんだよ?
  それに、、あの文字は、、普通じゃねぇ」

亜門は、ここに来て初めて感情を露わにする
自然に涙が零れ、両手の拳を握りしめ、身体を震わせている
その姿に、先生も驚くほどだ

本来なら、話す事では無いのだが、つくしの心のケアと、亜門に芽生えた思い遣りと庇護欲と言う気持ちを考え、話す事にした

施「亜門。 誰にも話さないと約束できる?」
亜「もちろん、、」

施「これからも、つくしちゃんと仲良くできる?」
亜「もちろん」

その瞳も初めて見る物だ
力強く慈しむような瞳だ

それを確認し、知っている事の全てを話した


それから、つくしの世話を甲斐甲斐しくする亜門の姿が見られるようになる
そしてつくしも、亜門に心を開き始めた

学校から帰ってきた亜門に、早速絵本を持って行く

つ「亜門。 この本読んで?」
亜「またこの本?」

つくしのお気に入りは、お姫様と王子様の本だ
綺麗なドレスを着たお姫様に、王子様が跪きその手を取りプロポーズする
そしてその手の甲にキスをしてエンドとなるのだが、、

つ「つくしも、お姫様になれるかな?」

照れた顔で、恥ずかしそうにポツリと問う
その姿がいじらしい

亜門は、目を細めてつくしに告げる

亜「もちろん、、なれるよ」
つ「こうして、王子様に会える?」

亜「あぁ、、絶対に会える」

亜門の言葉に、つくしは嬉しそうに照れ笑いを見せる
そのつくしの頭を撫でながら、亜門は思う

『絶対に幸せになってほしい。 誰よりも、誰よりも幸せに』



にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト



12 Comments

There are no comments yet.
管理人のみ閲覧できます

-  

2017-11-30 09:31

このコメントは管理人のみ閲覧できます

EDIT  REPLY    
管理人のみ閲覧できます

-  

2017-11-30 09:56

このコメントは管理人のみ閲覧できます

EDIT  REPLY    
管理人のみ閲覧できます

-  

2017-11-30 10:29

このコメントは管理人のみ閲覧できます

EDIT  REPLY    
Re: ノエ様

りおりお  

2017-11-30 11:34

こんにちは

つくしちゃんは、重い十字架を背負っています
それを目にした時、亜門の心に庇護欲と言う物が生まれました
亜門も、この施設に居ると言う事は、やむにやまれぬ事情があったはず
だから、誰とも打ち解けなかった
もちろん、亜門の性格もありますけどね

でも、つくしちゃんと出会い、その感情が少しずつ変化しているのでしょう
それが分かったからこそ、養護施設の職員はつくしちゃんの過去を亜門に教えました
それによってさらにつくしちゃんに対する庇護欲、愛しさが増したはず

この二人、、これからどうなっていくのか?
そして類君の登場は?

是非お楽しみに~

EDIT  REPLY    
Re: ゆきり~様

りおりお  

2017-11-30 11:40

こんにちは

テレビで、幼児虐待と言うニュースを良く目にしますよね
ほとんどが、『内縁の、、』と言う場合が多いですし、最近では生まれたばかりの我が子を、コンクリート詰めにしたとか
何があったか分りませんが、生まれてきた子供に罪は無い
それが、、と思うとやり切れませんね

かと言って、自分の子育てが完璧だったかと言われると、そうでもないです
小さな頃の反抗期は、どんなに話して聞かせても分かって貰えないし、泣く叫ぶとありとあらゆる手段で自我を通そうとします
他に子供がいたら、尚更腹立たしく感じますよね

手を出してはダメ、、と分かっていながらも、言葉で注意しても分かってくれない場合、、手を挙げた事も有ります
今では反省です
それぐらい、育児は大変なんですよね

さて、、このお話のつくしちゃんは、かなりの虐待を受けていました
それを目にした亜門の心には、少しずつ変化が見られます
つくしちゃんにとっても、亜門にとっても、この出会いで人生が変わった事でしょう

明日も是非楽しんで下さいね

EDIT  REPLY    
Re: わん~様

りおりお  

2017-11-30 11:44

こんにちは

昔は、隣近所は皆知り会い、、と言うぐらい、密なつながりがありました
それこそ、近所の子供達が一緒に遊ぶ事も多々ありました
小さな子供の面倒を、近所の子供が見たりしていました

でも今は、、それがありません
ご近所さんが何をしているのか?
両隣と前の家の名前は分かっても、、更にその隣となると、苗字すら分りません
寂しいですよね

さてお話、、
つくしちゃんの秘密を知った亜門は、初めて庇護欲と言う感情が生まれました
同じ施設に入所しているので、亜門にも凄く分かる部分があるのでしょう
だからこそ、今まで心を開かなかったのかもしれません

でもこうして、同じ境遇で守りたい物が出来た
きっと、、良い出会いだったと思います

この二人がどうやって類君と出会うのか、、
是非お楽しみに
もちろん私の妄想ですから、そんなに難しい事ではありません(笑)

EDIT  REPLY    
管理人のみ閲覧できます

-  

2017-11-30 11:46

このコメントは管理人のみ閲覧できます

EDIT  REPLY    
Re: り~様

りおりお  

2017-11-30 12:05

こんにちは

つくしちゃんの小さな背中一杯に、やけどのような痕がクッキリとありました
そこには文字が書いてあるみたいですね

ただでさえそのやけどの痕に驚いた亜門ですが、その文字にもビックリだったのでしょう
だから亜門の心に、初めて庇護欲と言う炎が灯りました
何が何でも、つくしを守らなければ、、と言う

さてその文字は?
後々分かりますよ

推理してみてくださいね、、
って、今の段階で分ったら凄い!!

EDIT  REPLY    
管理人のみ閲覧できます

-  

2017-11-30 17:55

このコメントは管理人のみ閲覧できます

EDIT  REPLY    
Re: ロン~様

りおりお  

2017-11-30 18:49

こんばんは
こちらでのアップは、四苦八苦です
やはり、ヤフーで慣れていましたからね
今までのヤフーブログなら、直ぐに戻りたい所です
早く全貌が知りたいです

さてお話、、
つくしちゃんの背中には、目を背けたくなるようなやけどの痕があります
それを見て、亜門は息を呑むとともに、庇護欲のような物が生まれました
つくしちゃんのこれからの人生、そして類君との出会い
どうなっていくのか、是非楽しんで下さいね

王子様はやっぱり類君ですよねぇ
分かり易いですよね(笑)

EDIT  REPLY    
管理人のみ閲覧できます

-  

2017-11-30 23:50

このコメントは管理人のみ閲覧できます

EDIT  REPLY    
Re: mar~様

りおりお  

2017-12-01 10:47

こんにちは

幼児虐待のニュースは良く目にしますよね
自分がお腹を産んで痛めた子供です
その子供を虐待?と思うと切なくなります

今回のお話のつくしちゃんは、まさしく言われも無い暴力を受けています
でも何故?ですよね

暴力をするには、何かしらの理由があるはず
もちろん理不尽な物もあります
つくしちゃんの母親は、どうしてなんでしょうね?

って事で、、
王子様に会いたいという、普通の女の子の夢を持つようになったつくしちゃん
これから、どう成長するのでしょう?

類君はいつどこで出会う?も想像しながらご覧くださいね

EDIT  REPLY    

Leave a reply