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夢幻<完>

もう一つの12【愛情編】

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こちらはもう一つのエンドです




「牧野!!!」

類は、ベッドから飛び起きる
おかしいくらい、体は汗ばみ、ドキドキと鼓動が早い

サッと目覚ましを見ると、まだ5時前だ
それでもジッとしていられず、すぐさま着替え病院へ急いだ

何事も無ければそれで良い
単に身体が辛いから、俺に癒しを求めに来ただけだ
きっとそうだ、、
と、自分に言い聞かせる

病院に到着すると、裏口の緊急出入り口から中に入る

薄暗い廊下、、
シーンとした外来フロアを通り抜け、エレベーターに乗り込む

そして牧野のいるフロアに到着した
すると、、看護師が、慌ただしく動いている


途端、俺の身体に緊張が走る

――何かが起こっている

ダッシュで牧野の病室へ向かう
普段なら「廊下は走らないでください」と言う看護師も、今はそれどころではないのだろう

誰も何も言わない

無菌室の前まで来ると、一度深呼吸をする
そしてそのドアを開け、入口の所で白衣と簡易キャップを身に着け、両手をしっかりと消毒する
そして、、病室が覗けるドアを開けた

ピッピッピッ

『先生、血圧が低下しています』


『牧野さん、、頑張って』


『つくしちゃん、、分かる? やっと、やっと、、ドナーが見つかったって喜んだばかりでしょ? 頑張ろ?』

牧野の周りには、数人の医師と沢山の看護師が何か処置をしている
そして、中の様子が小さな声と共に伝わってくる
それはまるで小さな戦場のようだ
そして、皆が必死に牧野を助けようともがいている

「まきの、、、牧野、、牧野! 牧野!! 牧野!!!」

俺の声は、次第に大きく唸る

その声が届くとは思わない
中で治療している医師や看護師の迷惑になってもいけない
そう思うが、、その声を止める事は出来ない

「牧野!! 頑張れ!! まだまだやりたいことがあるって言っただろ?
俺と一緒に、美味しい物を食べたり、いろんな場所へ行きたいって言っただろ?
だから、、頑張れ!! 俺を一人にするな!!!」

祈るような気持ちが言葉に出てしまう
そして、、牧野を責めるような言葉まで

「牧野!! 牧野!! あんなキスで終わりを告げるなよ!!
ほんとのキスを、あんたにしたいんだ!! 

一方的なキスなんて、、嫌だからな!!
分かってる? なあ、、『分かってる』って言えよ!!」

俺の姿と言葉が聞こえたのだろうか?
一人の看護師が、俺の方を向いた後、牧野の耳元に何か告げてくれている
そして、牧野の顔が少しだけ俺の方に傾いた

俺は、部屋の隅にあるスケッチブックを手に、サッと文字を書く
そして、それを牧野に見えるように掲げた

『好きだ』

そして、ページを捲り、次の文字を書く

『デートしような』
『手を繋いでさ』
『だから、頑張れ』
『負けるな』
『愛してる』

見えたかどうかわからない
既に目が霞んでいるかもしれない

だけど、、
牧野はかすかに頷いたように見えた

そしてバタバタと牧野家の三人が入ってきた

「あっ、類さん、、」

俺が既に来ている事に驚いた様子の三人だが、すぐに牧野に向かって励ましの言葉を投げかけている

それを聞きながら、、俺はひたすら祈る
祈る事しかできなかった

頑張っているのは牧野だ
俺はただ、、こうして祈る事しかできない
なんて無能なんだろ
なんて非力なんだろう

でも、、頑張れ



ピッピッピッ、、、

ピッピッピッ、、、

ピッピッピッ、、、



無機質な機械音が、俺に安堵をもたらす

大丈夫

きっと大丈夫

絶対大丈夫

俺達、やりたい事が沢山あるんだから
そうだろ?

牧野、、





昼を過ぎる頃、、
やっと、その部屋から出た

「類さん、、いろいろとありがとうございます」
「つくしも、なんとか頑張ってくれて」
「類さん、ありがとう。 でもなんで類さんがここに? 

病院から連絡でもあったの?」

「いや、、牧野が夢の中で俺に会いに来てくれて」

「夢ですか、、あの子は凄く類さんの事を頼りにしているんでしょうね
私達の所には、一度も会いに来てくれないんですから」

牧野の期待に応えられたかどうか判らない

俺はただ、励ます事しか出来ないんだから

でも、、それでも牧野の生きる糧になれたんなら
頑張れる力になれたんなら

俺は無能でも非力でもない?

現に牧野は頑張ってくれた
とりあえず、、危機を脱してくれた


――それが、牧野の答えであり、今後の俺の役目か?


「じゃ、、俺はこれで。 また来ます」
「えぇ、、本当にありがとうございました」

類は、牧野家と別れ、足早に病院を後にする


早く帰って寝よう
きっと牧野は、、夢の中で俺を待っている

『頑張ったよ。 褒めてくれる?』
と言いたくて、ウズウズしているはずだ

だから俺も言ってやろう

『頑張ったな。 で、あのキスは何? 不意打ちのキスは卑怯だと思うけど?』
ってさ

そして、二人でデートプランを考えようか?
絶対に、一発目のデートは遊園地にするんだ

楽しみにしててよ?






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